研究課題/領域番号 |
19K09552
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
古田 太輔 広島大学, 病院(医), 助教 (30781645)
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研究分担者 |
久保 忠彦 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (70397959) [辞退]
味八木 茂 広島大学, 病院(医), 講師 (10392490)
安達 伸生 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (30294383)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MSC由来エクソソーム / homing / 骨肉腫 / デリバリーシステム |
研究実績の概要 |
近年、四肢悪性腫瘍の抗癌剤治療の開発により予後の改善を認めるが、抵抗性や重篤な副作用など課題が多く新たな治療開発が切望される。一方で間葉系胚細胞(Mesenchymal stem cell; 以下MSC)の組織障害・悪性腫瘍部へ遊走(homing)する機能を利用し標的細胞に抗腫瘍効果因子を付加し運搬するデリバリーシステムの報告が散見される。しかし近年、MSC移植された細胞は数%程度しか生着できず、悪影響を及ぼすことも懸念され、細胞から放出される液性因子が注目されている。その液性因子の一つであるエクソソームは細胞間コミュニケーションに関与する微小胞体であり、MSCから放出されるエクソソームにもhoming効果の可能性が期待されているが機能は不明である。我々はMSC由来エクソソームのhoming効果の可能性を明らかにし、四肢悪性骨腫瘍に対して抗腫瘍効果のあるmiRNAを運搬する新たなデリバリーシステムの開発を計画し,実験を開始した。MSC由来エクソソームに蛍光標識を付けて骨肉腫モデルマウスに静脈注射した24時間後にin vivo 蛍光イメージング(IVIS)で評価を行い、最初は腫瘍に集積を示すデータを得たが、現在は再現性に乏しい状態である。しかしMSC由来エクソソームにmiRNA143を過剰に含有させたものとコントロール(miRNA143過剰含有無し)を骨肉腫モデルに投与した。24時間後にsacrificeして骨肉腫瘍内、肝臓、肺、腎臓のmiRNA143をPCRにて定量評価した。するとコントロール群(N=3)と比較してmiRNA143含有MSCエクソソーム投与群(N=3)を比較すると骨肉腫腫瘍内のみが、コントロールと比較して2倍量を示し、その他の臓器は差を認めなかった。MSCエクソソームがhoming機能を有していることを解明し、骨肉腫治療の開発を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は前研究において骨折モデルにMSC由来エクソソームを投与して骨折部への集積をIVISにて評価を行い、濃度依存性に骨折部に集積する可能性がある予備実験データを有していた。そのため骨肉腫モデルにMSC由来エクソソームを投与し、腫瘍部への集積を同様の方法で評価を開始した。当初の2例目までは腫瘍部に集積する傾向があったが、その後はどうしても再現性が得られていない。機械の調整などを行ったり、蛍光色素を変更したりしたが再現性が得られない。未だ解決策はないが、IVISを用いた視覚的評価は同時進行で実験を進めていく。一方で同時に定量評価にてMSC由来エクソソームのデリバリーシステムを評価する方向に変えて、少しずつではあるがデータが蓄積されつつある。大幅な変更を余儀なくされ、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
MSC由来エクソソームのhoming機能を証明するためにMSC由来エクソソームにmiRNA143を過剰に含有させて骨肉腫モデルに投与した。24時間後にsacrificeして骨 肉腫内のmiRNA143をPCRにて定量評価した。するとコントロール群(N=3)と比較してmiRNA143含有MSCエクソソーム投与群(N=3)が8倍以上を示していたが、その後の実験で再現性が認められなかった。しかし投与法を心臓からに変更したことにより、再現性が確認されつつある。現在は、腫瘍内、肝臓、肺、腎臓などの他臓器ではmiRNA143mの量がコントロールと比較して差を認めていないが、腫瘍内のみコントロールと比較して約2倍量になることが確認された。 日本整形外科基礎学術集会に(2020/10月)発表し、2021/10月にも蓄積データを発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験が遅れてしまったため、繰越金が生じた。次年度は、ヌードマウスの購入や実験に必要な試薬、および論文投稿料に充てていく計画である。
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