研究課題/領域番号 |
19K09553
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
馬渡 正明 佐賀大学, 医学部, 教授 (80202357)
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研究分担者 |
久木田 明子 佐賀大学, 医学部, 准教授 (30153266)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨芽細胞 / 骨細胞 / スクレロスチン / 核蛋白質 |
研究実績の概要 |
超高齢化社会に伴い、骨粗鬆症などの骨・関節疾患の患者数が増加し、重大な社会問題となっている。骨には、骨吸収を行う破骨細胞とRANKLを発現し骨形成を行う骨芽細胞が存在し骨のリモデリングを行っているが、近年、骨細胞が骨代謝において重要な働きを持つことが明らかとなってきた。骨細胞は骨全体にネットワークを形成し、スクレロスチンを介した骨形成抑制やRANKLを産生し骨吸収制御にも関わっているがその作用の詳細は不明の点が多い。申請者らは、転写制御機能を持つ核蛋白質Nupr1の遺伝子欠損マウスの解析から、Nupr1遺伝子欠損マウスでは骨芽細胞の増殖さらに分化が促進しており骨形成が亢進し、骨芽細胞の培養系でスクレロスチンの発現が低下することを見出した。本研究では、Nupr1による新たな骨形成促進機構や骨細胞における作用を明らかにすることを目的とした。骨組織の免疫染色を行ったところ、Nupr1は骨芽細胞の一部や骨細胞に発現しており、スクレロスチンはNupr1遺伝子欠損マウスの骨細胞で発現の低下傾向が見られた。また、骨芽細胞においてNupr1をレンチウイルスを用いて高発現するとスクレロスチンの発現が亢進した。スクレロスチンは骨芽細胞のWntシグナルを抑制することにより骨形成を抑制するが、Nupr1遺伝子欠損マウスの骨芽細胞ではWntシグナルの標的遺伝子であるAxin2, Lef1, Tcf-1の発現が亢進しており、Wntシグナルの亢進が骨形成の促進に関与することが示唆された。さらに、骨細胞同士の連絡に関与する細胞突起をPhalloidin染色により調べたところ、Nupr1遺伝子欠損マウスの骨細胞では細胞突起の形成が減少していることがわかった。そこで、野生型及びNupr1遺伝子欠損マウスの骨から骨細胞を単離し、現在DNAマイクロアレイ解析による網羅的遺伝子発現の比較解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Nupr1遺伝子欠損マウスにおける骨形成促進にスクレロスチン発現低下による骨芽細胞のWntシグナルの亢進が関与する可能性を見出した。また、Nupr1が骨細胞のネットワークに関与する可能性を見出し、野生型とNupr1遺伝子欠損マウスの骨細胞が発現する遺伝子のDNAマイクロアレイ解析を行い現在様々な解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
DNAマイクロアレイ解析で明らかにされた情報をもとにNupr1の骨芽細胞と骨細胞における機能を解析する。特に骨細胞のネットワークに関与するものなどに注目する。また、骨粗鬆症などのいくつかの病態モデルを用いて、Nupr1の病態における機能とそのメカニズムを解析するために実験を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、血清のロットチャックが終了しておらず予定していた血清の購入が出来なかったため、次年度使用額が生じた。また、培養などを小スケールで行ったため、予想していた額が生じなかった。次年度は、新しく血清を購入し、DNAマイクロアレイ解析で明らかとなった遺伝子の解析のための細胞培養関連、試薬キット、抗体などに使用する。
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