廃用性筋萎縮は筋の機能的および形質的変化を引き起こす。これに対する有効な予防法や治療法は、運動療法以外に確立されていない。廃用性筋萎縮の予防として、特定の栄養成分の摂取による効果が期待されている。廃用性筋萎縮の分子メカニズムは、筋タンパク質の合成抑制や分解亢進により生じ、IGF-1介在ユビキチン-プロテアソーム経路による筋タンパク質分解の促進、PI3K/AKT/mTOR経路によるタンパク質合成の抑制である。ROS介在酸化ストレス経路による筋タンパク質の分解も促進される。筋タンパク質の分解には、AKT、FOXO、ROSを介したMAFbx/atrogin-1、MuRF-1と呼ばれる筋萎縮関連遺伝子の発現が関与する。生体内のGSHは、抗酸化作用や薬物代謝などに関与している。生体内のGSHが枯渇する加齢関連疾患では、GSHの投与が治療や予防に有用である。 これまでに、後肢固定廃用性筋萎縮モデルラットへの経口GSH投与は、骨格筋中に萎縮の進展とともに生じたROSを消去し、筋タンパク質分解を軽減することを介し、廃用性筋萎縮を予防することが明らかとなった。さらに、後肢固定廃用性筋萎縮の回復過程に及ぼす経口GSH投与およびリハビリテーションの相乗的有効性を検討している。 廃用性筋萎縮の回復過程に、リハビリテーション処置を実施することにより有意に萎縮が改善し、リハビリテーション処置に加え経口GSH投与をするとさらに改善が進むことが明らかとなった。廃用性筋萎縮の発生に関与するキサンチンオキシダーゼ活性やROS産生は、リハビリテーション処置に加え経口GSH投与により減弱した。この時にGSH/GSSGレベルが増加することより、リハビリテーションは筋組織中のGSH産生を促す作用があった。筋タンパク質分解に関連するROS介在酸化ストレス経路の遺伝子発現についても、上記の裏付けとなる結果が得られ始めている。
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