小児大腿骨頭壊死症は学童期に発症する難病で大腿骨頭の変形・圧潰により歩行・生活困難となる。また、30歳代から早期の変形性関節症をきたし、股関節痛に生涯苦しむ。病態の発症ならびに進行の機序は不明であり有効な治療法はない。本研究は申請者が開発した骨壊死モデルマウスを用い、本疾患の分子病態にIL-6が大きく関与しているか、を問うものである。IL-6レセプターの中和抗体をマウスに投与することにより、壊死の進行が抑制され、かつ、病巣の骨形成が促進した結果を得ている(Osteoarthritis and Cartilage 2019)。さらに、IL-6の上流として、炎症性起因物質(DAMPs)や白血球(特に好中球やマクロファージ)の解析を行った。結果として、骨壊死部には死細胞から放出される炎症起因物質(DAMPs)の一つであるHMGB1が多く存在していることを同定した。さらに、HMGB1が壊死部から周囲の関節軟骨に働きかけて軟骨細胞からのIL-6分泌が促進されている結果を世界に先駆けて新たに報告した(JBMR Plus 2021)。また、海外の研究機関と共同研究を推進し、IL-6受容体に対する中和抗体が病態の進行を抑制する可能性について骨壊死ブタモデルを用いて検討・報告した(JBMR 2021)。さらに、骨壊死後の修復過程が発症年齢により大きく異なる可能性についても動物モデルを用いて検討・報告した(J Orthop Res 2021)。現在、IL-6中和抗体を用いた研究結果を投稿中である(2022年8月投稿)。4年間の研究成果として、小児大腿骨頭壊死症の治療戦略の1つとしてIL-6中和抗体を用いた方法が強く期待される結果を得ることができた。
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