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2020 年度 実施状況報告書

慢性疼痛に対する視床下部-脊髄系の疼痛受容および抑制システムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K09564
研究機関産業医科大学

研究代表者

川崎 展  産業医科大学, 医学部, 講師 (40644860)

研究分担者 上田 陽一  産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードオキシトシン / トランスジェニックラット / 変形性膝関節症 / MIA / 神経障害性疼痛
研究実績の概要

令和2年度は視床下部ホルモンのバゾプレッシン(AVP)及び副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)に着目し、変形性膝関節症(OA)モデルラットにおける視床下部-下垂体-副腎(HPA)系の変化を評価した。OAモデルラットの視索上核(SON)、室傍核(PVN)及び下垂体前葉(AP)を含む凍結切片を作成し、in-situ hybridization法を用いてSON及びPVNおけるAVP hnRNA、PVNにおけるCRH mRNA、そしてAPにおけるPOMC mRNAの発現を測定した。さらに、血性AVP及びコルチコステロン(CORT)濃度を測定した。その結果、OA群では、SON及びPVNにおけるAVP hnRNAの発現、APにおけるPOMC mRNAの発現ならびに血性AVP、CORT濃度が有意に高値だった。一方、PVNにおけるCRH mRNAの発現は有意に低値を示した。続いて、緑色蛍光タンパク(eGFP)をAVP遺伝子に融合させたAVP-eGFPトランスジェニック(TG)ラットのOAモデルを作成し、同様にSON及びPVNにおけるAVP-eGFP輝度を測定した。その結果、OA群では、eGFP輝度が有意に高値だった。この結果は、国際誌であるJournal of Neuroendocrinologyに掲載された。
モデルは異なるが、赤色蛍光タンパク(mRFP1)をOXT遺伝子に融合させたOXT-mRFP1 TGラットを用いて、関節リウマチの動物モデルを作成し、OXTニューロンに対して、電気生理学的解析を行った。その結果、視床下部PVNにおけるOXTニューロンはグルタミン酸のシナプス前放出が増加しており、さらに内因性OXTによる抑制性のフィードバックシステムが存在し、そのシグナル伝達にNOSが関与していることを明らかにした。この結果は国際誌であるMolecular Painに掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和2年度は、変形性膝関節症モデル、神経障害性疼痛モデル作成、そして関節炎モデルでの電気生理学的実験を行った。現在、OXT-mRFP1 TGラットを用いて神経障害性疼痛(NP)モデルを作成し、痛覚閾値が低下していることを確認している。処置後14日に灌流固定した脳SON及びPVNにおけるOXT-mRFP1輝度を測定したところ、NPモデルで対照群と比較し有意に高値であり、第5腰椎レベルの脊髄後角におけるOXT-mRFP1陽性顆粒も有意に高値であることを確認している。しかし、COVID-19による緊急事態宣言のため、研究室への立ち入りが制限され、当初の実験計画より若干遅れ、実験予定であったOXTニューロンの可塑性変化を捉える実験までは至っていない。

今後の研究の推進方策

次年度においては、変形性膝関節症モデル、神経障害性疼痛モデルを作成し電気生理学的実験を行い、OXTニューロンの可塑性を評価する予定である。さらにOXT投与、OXT阻害薬投与による疼痛閾値の変化を観察する。本研究の成果は、日本生理学会、日本整形外科学会などの国内学会及び国際学会に発表し、国際専門誌に英文論文として発表する予定である。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19による緊急事態宣言のため、研究室への立ち入りが制限され、当初の実験計画より若干遅れ、予定使用額を完全に使用することができなかった。次年度にOXTニューロンに対する電気生理学的実験に前年度繰越金を使用する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] The neurohypophysial oxytocin and arginine vasopressin system is activated in a knee osteoarthritis rat model.2020

    • 著者名/発表者名
      Nishimura H, Kawasaki M, Suzuki H, Matsuura T, Baba K, Motojima Y, Yamanaka Y, Fujitani T, Ohnishi H, Tsukamoto M, Maruyama T, Yoshimura M, Nishimura K, Sonoda S, Sanada K, Tanaka K, Onaka T, Ueta Y, Sakai A
    • 雑誌名

      Journal of Neuroendocrinology

      巻: 32 ページ: 1-15

    • DOI

      10.1111/jne.12892.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Presynaptic glutamatergic transmission and feedback system of oxytocinergic neurons in the hypothalamus of a rat model of adjuvant arthritis.2020

    • 著者名/発表者名
      Fujitani T, Matsuura T, Kawasaki M, Suzuki H, Nishimura H, Baba K, Yamanaka Y, Ohnishi H, Ueta Y, Sakai A
    • 雑誌名

      Molecular Pain

      巻: 16 ページ: 1-15

    • DOI

      10.1177/1744806920943334.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 変形性膝関節炎モデルラットにおけるオキシトシンと侵害受容調節の検討2020

    • 著者名/発表者名
      西村春来, 川﨑展, 馬場一彦, 元嶋尉士, 松浦孝紀, 鈴木仁士, 山中芳亮, 藤谷晃亮, 大西英生, 上田陽一, 酒井昭典
    • 学会等名
      第64回 日本リウマチ学会
  • [学会発表] 急性単関節炎はラットにおける脳下垂体システムと視床下部-下垂体-副腎軸を活性化する2020

    • 著者名/発表者名
      西村春来,川﨑展,松浦孝紀,鈴木仁士,元嶋尉士,馬場一彦,大西英生,山中芳亮,藤谷晃亮,吉村充弘,丸山崇,上野啓通,園田里美,西村和朗,田中健太郎,眞田賢哉,尾仲達史,上田陽一,酒井昭典
    • 学会等名
      第38回 産業医科大学学会
  • [学会発表] TRPV1 ノックアウトマウスを用いた神経障害性疼痛における疼痛逃避行動と脊椎後角の神経/グリアの活性の変化の検討2020

    • 著者名/発表者名
      馬場一彦, 川﨑展, 西村春来, 藤谷晃亮, 松浦孝紀,山中芳亮, 鈴木仁士, 眞田賢哉, 西村和朗, 田中健太郎, 園田里美, 吉村充弘, 丸山崇, 上田陽一, 酒井昭典
    • 学会等名
      第71回 西日本生理学会
  • [学会発表] レセルピン反復投与誘発線維筋痛症モデルラットにおける痛覚反応・うつ状態の評価及びオキシトシン系活性化の検討2020

    • 著者名/発表者名
      池田直史, 川﨑展, 馬場一彦, 西村春来, 眞田賢哉, 西村和朗, 鈴木仁士, 吉村充弘, 丸山崇, 上田陽一, 酒井昭典
    • 学会等名
      第71回 西日本生理学会
  • [学会発表] TRPV1ノックアウトマウスを用いた神経障害性疼痛における疼痛逃避行動と脊椎後角の神経/グリアの活性の変化の検討2020

    • 著者名/発表者名
      馬場一彦, 川﨑展, 西村春樹, 藤谷晃亮, 松浦孝紀, 山中芳亮, 鈴木仁士, 眞田賢哉, 西村和朗, 田中健太郎, 園田里美, 吉村充弘, 丸山崇, 上田陽一, 酒井昭典
    • 学会等名
      第35回 日本整形外科学会
  • [学会発表] アジュバント関節炎モデルラットにおける視床下部オキシトシン作動性ニューロンでのシナプス前グルタミン酸作動性伝達ならびにフィードバックシステム2020

    • 著者名/発表者名
      松浦孝紀, 藤谷晃亮, 川﨑展, 鈴木仁士, 西村春来, 馬場一彦, 山中芳亮, 大西英生, 上田陽一, 酒井昭典
    • 学会等名
      第42回 日本疼痛学会

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公開日: 2021-12-27  

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