I型筋強直性ジストロフィー(DM1)はリピート病の一つで、DMPK遺伝子の3’非翻訳領域に存在するCTGリピートが異常伸長することが原因である。最近の研究で、異常伸長したリピートがスプライシング異常を引き起こすことで骨格筋をはじめとした臓器に異常が生じることが明らかになってきているが、リピート自体がなぜ伸長するのかはよく分かっていない。そこで本研究では、DM1患者由来iPS細胞を用いたリピート伸長の細胞モデルでリピートが伸長するメカニズムの解明を行った。 申請者は樹立したDM1-iPS細胞をクローニングし、遺伝背景が同一でリピート長のみ異なるクローンを得た。これらのクローンを長期継代培養後にリピート長を解析し、リピートの伸長が抑制されているクローンを発見した。さらに、リピート伸長抑制クローンとリピートが伸長するクローンの遺伝子発現を網羅的に解析し、8つのリピート伸長抑制候補遺伝子を得た。得られた候補遺伝子をDM1-iPS細胞で遺伝子操作してリピートの伸長が抑制されるかを検討したところ、発現を抑制することでリピート伸長が抑制される遺伝子をリピート伸長関連遺伝子として同定した。さらに、同定した遺伝子のタンパク質がリピート配列に結合することと、リピートの異常伸長に関わることが報告されているDNAミスマッチ修復遺伝子MSH2/3タンパク質の近傍に存在することを明らかにした。また、同定した遺伝子の発現とDM1患者のリピート長との関係を解析したところ相関があることが示された。
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