研究課題/領域番号 |
19K09576
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
糸永 一朗 大分大学, 医学部, 講師 (10295181)
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研究分担者 |
河野 正典 大分大学, 医学部, 助教 (30571773)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Ewing肉腫 / RNA helicase A |
研究実績の概要 |
Ewing肉腫の原因遺伝子は、RNA代謝に関わるEWSと転写因子Fli1が融合したEWS-Fli1である。EWS-Fli1による発がんは、Fli1側の転写因子機能の異常によると考えられてきた。しかし近年、RNA helicase A (RHA) がEWS-Fli1に結合すること、さらにその結合を阻害する小分子化合物YK-4-279によりEwing肉腫細胞の増殖が抑制されることが報告された。我々はこれまで本疾患の病態をmicroRNAの発現異常という側面から研究してきたが、Fli1の標的ではない多数のmicroRNAの発現異常がみられることから、より普遍的なRNA代謝の異常がEWS-Fli1による発がんの一端を担っている可能性が考えられた。そこで本研究では、EWS-Fli1とRHAの相互作用の詳細を解明し、RNA代謝異常によるEwing肉腫発がんメカニズムを明らかにすることを目的とする。転写因子であるFli1は、DNA上に存在するプロモーターに結合し下流の遺伝子発現に影響するため、その機能異常が発がんに寄与することは理解しやすい。一方、EWSのRNA代謝機能の異常については、殆ど研究がなされていない。本研究では、EWS-Fli1とRHAの相互作用の機構を解明することでEwing肉腫におけるRNA代謝異常という新たな視点からその病態を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はすでに、EWS-Fli1とRHAの結合を阻害する低分子化合物YK-4-279を入手し、YK-4-279投与によりEwing肉腫細胞にアポトーシスが誘導されることを確認している。Ewing肉腫細胞株にアポトーシスを誘導できるYK-4-279のdose dependent, time courseをとり至適条件を突き止めた。判明したIC50を基準としてYK-4-279による細胞増殖抑制が細胞毒性ではなくアポトーシスによる結果であることを、フローサイトメトリーとアポトーシス関連蛋白の発現によって確認した。また、Ewing肉腫細胞株4種および融合遺伝子を持たない骨肉腫細胞株2種にYK-4-279を投与し、マイクロアレイを用いて発現変化した遺伝子を網羅的に解析した。この際、microRNAおよびmRNAともに投与群と非投与群を比較している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに得られた結果から今年度は細胞増殖抑制作用の詳細メカニズムを解明するためアポトーシス関連因子のmRNAを標的とするmicroRNAを抽出する。Ewing肉腫細胞株において、その抽出されたmicroRNAを補正することでアポトーシスが得られれば、アポトーシス抵抗性に関与する因子であることが明らかとなる。また、融合遺伝子におけるYK-4-279の反応部位を特定する。その反応部位がEWS側にありYK-4-279によってRHA機能が回復することが予想される。さらに融合遺伝子にEWSを有する明細胞肉腫、粘液型脂肪肉腫の細胞株にYK-4-279を投与し、細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導が得られるか解析する。YK-4-279の作用点がEWSにあればEwing肉腫と同様の結果が得られると予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
[次年度使用が生じた理由] 申請時点では至適抗体濃度の同定に濃度依存性試験、時間依存性試験に多くの試薬を使用する予定であったが予備実験の段階で適正試薬濃度が判明したため結果として予算が余る事になった。また動物実験に関しても同様で報告できるデータが比較的早期に取得できたため申請時の予算と解離が生じた。 [使用計画] 予定していた動物モデルの数を増やすことでデータの信用性を高めるとともに再現性の得られるデータを得るための手法に改良を重ねていく。
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