研究実績の概要 |
本研究の目的は、未だ十分には明らかにされていない関節リウマチ (rheumatoid arthritis, RA) における関節破壊進行の遺伝学的機構を明らかにし、治療標的となる遺伝子経路を同定することである。関節破壊関連遺伝子解析で最も問題になるのが関節破壊のスコアリングである。RAで標準的な関節破壊のスコアリング法であるSharp/van der Heijde score(SHS)法は習熟するまでに長時間のトレーニングが必要である上に、慣れた読影者でも画像読影に時間を要する。そのため疾患罹患の有無さえ分かれば実施できる疾患感受性遺伝子解析と異なり、関節破壊関連遺伝子解析では関節破壊のスコアリングがボトルネックとなる。近年、画像解析の分野でAIの活用が進んでいる。特に深層学習を用いた機械学習モデルである畳み込みニューラルネットワーク(Convolution Neural Network, CNN)は最大の技術革新の一つとされ、従来の技術では難しかった画像認識を可能にした。我々はCNNをベースとして公開されている関節破壊スコアリングモデル(RA2 DREAM challenge model)に改良を加え、EfficientNetを採用し、転移学習、Self-Attention機構、自己相互学習機構、Single Shot MultiBox Detector(SSD)による情報の付与などを加えることで精度の大幅な改善を得た。当初、正解ラベルとモデルの算出した予測ラベルの相関係数は骨びらん0.6、関節裂隙狭小化0.7前後であったが、これらの機構を組み込んだことで、骨びらん0.82、関節裂隙狭小化0.85前後まで向上させることに成功し、すでに読影専門家(検者間相関係数0.85程度)と同等の識別力が得られた。
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