研究課題/領域番号 |
19K09589
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
小林 英介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (40365292)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 肉腫 / 脱分化 / 骨肉腫 / 滑膜肉腫 / TNIK |
研究実績の概要 |
我々はWntシグナルを最下流で制御するTRAF2 and NCK-interacting protein kinase(TNIK)を同定し、TNIK阻害剤NCB-0846を開発している。本研究の目的はWntシグナルの関与が指摘される滑膜肉腫に対して本薬剤の効果を検証することにある。 滑膜肉腫細胞株4株でWntシグナルの活性化を評価し、NCB-0846のIC50を測定した。また、免疫不全マウスに腫瘍細胞を移植し、in vivoでの増殖抑制効果を確認した。薬剤投与による細胞死をアポトーシスアッセイで評価した。さらに各種mRNA・タンパクの変動を定量PCR、Western blot法で検討した。その結果2株でWntシグナルの活性化が認められ、NCB-0846に対し高い感受性(Ic50=399.2nM,356.7nM)を示した。薬剤投与で速やかにアポトーシスが誘導され、SS18-SSXの発現が低下していることを確認した。多くのWnt標的遺伝子の発現が抑制されており、特にc-MYCの発現抑制が強く認められた。 また脱分化型骨肉腫における臨床情報を収集し、その治療成績および予後を解析した。その結果、通所の骨肉腫に比して化学療法抵抗性であるにも関わらず、予後が不良ではないことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はTNIK阻害の肉腫新規分子標的としての有効性の検討および肉腫における脱分化に着目した治療開発である。滑膜肉腫に対するTNIK阻害剤による研究はIn vitroレベルで順調に検証できている。また脱分化型骨肉腫においても全症例における臨床データを抽出し、その成果を報告した。その解析が終了していることから順調に経過している。
|
今後の研究の推進方策 |
TNIK阻害剤に関してはIn vitroの機能解析として脂肪分化マーカー・がん幹細胞マーカー発現の評価およびIn vivoでの解析をXenograftおよび肉腫PDXモデルを用いて行う。以上により治験導出に必要な非臨床データを収集する。また脂肪肉腫の脱分化メカニズムを探るために脱分化型脂肪肉腫および高分化型脂肪肉腫患者の凍結組織を用いてInfinium HumanMethylationEPIC BeadChipによる網羅的なDNAメチル化アレイを行い、腫瘍ごとのメチル化プロファイルを作製する。脱分化型脂肪肉腫に特異的なメチル化領域に着目し、メチル化制御にかかわる遺伝子を同定し、PPARγなど脂肪分化における転写因子との関連を解析する。さらには脱メチル化製剤やPPARγアゴニストを用いることで、脱分化制御をin vivo、in vitro検証し、脱メチル化剤の脱分化型脂肪肉腫における有効性を検証していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗状況による物品購入の関係で余剰が生じた。次年度以降での物品購入費として使用する予定である。
|