研究課題/領域番号 |
19K09589
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
小林 英介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (40365292)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 肉腫 / 分化 / 脱分化 |
研究実績の概要 |
肉腫における脱分化に着目した治療開発 肉腫の悪性度は幅広いスペクトラムを有し、しばし脱分化も知られているが、メカニズムは未だ明らかでなく、脱分化に着眼した治療開発はない。本研究では肉腫の分化や脱分化に着目したバイオマーカー開発や疾患概念の確立が目標である。脱分化が最も多く認められる脂肪肉腫に注目し、3例の脱分化型脂肪肉腫検体より29の脱分化型および高分化型臨床検体を採取し、DNAおよびRNAを抽出した。それらをwhole-exome sequencingにて評価しており、脱分化のメカニズムおよび治療標的探索を行っている。 また異時性に脱分化した軟骨肉腫に着目し、原発巣および脱分化巣の組織採取を行った。ここから精度の高いDNAおよびRNAを抽出することで、ゲノムおよびエピゲノムにおける遺伝子解析を行うことで、病理学的な妥当性の検討、異時性脱分化機構のバイオマーカーを同定を行っている。
TNIK阻害の肉腫新規分子標的としての有効性 タンパク質リン酸化酵素のTNIK(TRAF2 and NCK-interacting protein kinase)が骨肉腫で高頻度に活性化しており、TNIKの阻害薬が骨肉腫細胞の増殖を抑制するのみならず腫瘍細胞を脂肪細胞に変化させることを、マウスを用いた動物実験で明らかにした。また滑膜肉腫においてもTNIK阻害剤が有効であることを初めて明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
希少がんであるものの、順調に検体を採取し、解析をおこなっていることから、現在までの進捗状況はおおむね順調に推移していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
凍結検体もしくはパラフィンより抽出した組織を用いて遺伝子解析を行い、比較検討による疾患概念の確立と脱分化の機構に関与する遺伝子同定を行う。また肉腫では遺伝学的形質を保有したまま脱分化を生じることにも注目し、エビゲノム解析も加えてさらなる標的を探索する。また軟骨肉腫の脱分化に関して同様の遺伝子解析を軟骨肉腫とその脱分化成分に行うことで、病理学的な異時性脱分化型軟骨肉腫の定義としての妥当性の検討、異時性脱分化機構のバイオマーカーを同定し、免疫組織学的な検討の元で新たな疾患概念の可能性、治療方針の確立に繋げる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究本体および人件費に必要な経費を計上した。コロナのために学会発表などにかかる経費は少なかった。余剰分に関しては次年度以降に繰り越しの上で、解析や発表などにかかる費用に使用する予定である。
|