本研究は肉腫の分化機構に着目した治療開発のためにWintシグナル調節因子であるTRAF2 and NCK-interacting protein kinase (TNIK)の肉腫における治療標的としての有用性、脱分化という肉腫の悪性化メカニズムに着目した新規薬剤の臨床応用である。 TNIK阻害の肉腫新規分子標的としての有効性に関しては滑膜肉腫に対してその発現および細胞株でのTNIK阻害剤に対する有効性を検証した。われわれは滑膜肉腫の4つの細胞株(HS-SY- Ⅱ、SYO-1、Yamato、SS、AskaSS)でWntシグナルとTNIKの活性化を評価した。またTNIK 阻害剤である NCB-0846 の 有効性を検討した結果、2つの滑膜肉腫細胞株で Wnt シグナルと TNIK の活性化が認められ、これらの細胞株は阻害剤であるNCB-0846に対して高い感受性を示した。これらの薬剤高感受性の細胞株を用いて様々な遺伝子に対する siRNA を用いて増殖抑制効果を検討した結果、NOD/SCID 免疫不全マウスに腫瘍細胞を移植したxenograftでin vivoの増殖抑制効果を確認でき、結果はJCIinsightに受理された。 脱分化型軟骨肉腫はdenovoでの発生、もしくは通常型軟骨肉腫からの異時性脱分化が知られているが、原発巣とは異なる部位に異時性に脱分化成分のみが生じる現象は知られていない。通常型軟骨肉腫治療後に異時性に別部位に肉腫を生じた症例で、原発軟骨肉腫と異時性に発生にした肉腫両者の全エクソームシーケンシング(WES)を行った。その結果、軟骨成分を有さない高悪性度肉腫が原発である通常型軟骨肉腫と同じ遺伝子変異を生じていることを証明し、この肉腫が脱分化成分であることを遺伝学的に証明しえた。原発巣と異なる部位に発生した軟骨肉腫異時性脱分化の存在を世界で初めて確認し
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