研究課題/領域番号 |
19K09596
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長田 侃 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80815324)
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研究分担者 |
鬼頭 浩史 名古屋大学, 医学部, 招へい教員 (40291174)
三島 健一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40646519)
松下 雅樹 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (60721115)
神谷 庸成 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (50845542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メクロジン / 軟骨無形成症 / FGFR3 / 局所投与 |
研究実績の概要 |
線維芽細胞増殖因子受容体3(fibroblast growth factor receptor 3 : FGFR3)インヒビターをマウスモデルへの全身投与により骨伸長促進効果が認められている。本研究の目的は、FGFR3インヒビターの局所投与による骨伸長促進効果を検討することである。特定の短縮した骨に対する治療法は、現状では侵襲の大きい骨延長術しかない。FGFR3インヒビターの局所投与による選択的に骨伸長を促進する治療法が確立されれば、非侵襲的な治療法の開発へ結びつく可能性がある。これまでの研究で、4週齢の野生型マウスの膝関節に100μMのメクロジン30μLを計6回隔日投与し非投与側と比較検討したところ脛骨において有意な骨伸長効果および骨量増加を認めた。 令和1年度は、軟骨無形成症(achondroplasia:ACH)マウスモデル(ACHマウス)を用いて同様に膝関節に100μMのメクロジン30μLを計6回隔日投与し非投与側と比較検討を行った。ACHマウスにおいても脛骨において有意な骨伸長効果および骨量増加を認めた。メクロジン最終投与後に蛍光カルシウムキレート剤2種を24時間差で腹腔内投与し、24時間あたりの骨伸長量を非投与側と比較検討した。野生型マウスおよびACHマウスで、大腿骨と脛骨における骨伸長効果を認めた。現在、メクロジン以外のFGFR3インヒビターであるU0126も同様にマウスモデルを用いて膝関節内に局所投与し骨伸長および骨量増加効果を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和1年度は、1)マウスの膝関節にFGFR3インヒビターやアゴニストを投与すること、2)成長軟骨の組織学的評価を予定していた。1)については、4週齢のACHマウスを用いて膝関節に100μMのメクロジン30μLを計6回隔日投与し最終投与後48時間後にマイクロCT撮影し、大腿骨および脛骨の長さと骨量を非投与側と比較検討を行った。これにより、メクロジン膝関節局所投与はACHマウスの大腿骨と脛骨の骨伸長および骨量増加を促進させるというデータを得た。現在、メクロジン以外のFGFR3インヒビターであるU0126も同様にマウスモデルを用いて膝関節内に局所投与し骨伸長および骨量増加効果を検討中である。2)ついては、メクロジン最終投与後に蛍光カルシウムキレート剤2種を24時間差で腹腔内投与し、24時間あたりの成長軟骨における骨伸長量の検討を行った。これにより、野生型マウスおよびACHマウスの大腿骨と脛骨において成長軟骨における骨伸長効果を示すデータを得た。メクロジンの膝関節局所投与は内軟骨性骨化を促進させることが示唆されたため、今後は成長軟骨の増殖軟骨細胞層および肥大軟骨細胞層の厚み、細胞の大きさ、骨梁などを評価する。以上により、本研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和1年度までに、メクロジン膝関節局所投与により野生型マウスおよびACHマウスの大腿骨と脛骨の骨伸長を促進させるというデータを得た。令和2年度には、メクロジン以外のFGFR3インヒビターであるU0126やFGFR3のアゴニストであるFGF2、9、18も同様にマウスモデルを用いて膝関節内に局所投与し骨伸長および骨量増加効果を検討する。また令和1年度には、メクロジンの局所投与により成長軟骨における骨伸長効果を示すデータを得た。令和2年度には、成長軟骨の増殖軟骨細胞層および肥大軟骨細胞層の厚み、細胞の大きさ、骨梁などを評価することで、メクロジンの膝関節局所投与による内軟骨性骨化促進効果を組織学的に検討する。 以上によりメクロジンのマウスへの膝関節局所投与による骨伸長効果を示すデータが蓄積できれば、成長期のラットや家兎の大型動物の下肢長管骨骨端部に持続注入ポンプを用いてメクロジンを一定期間持続投与し骨伸長効果を検討する。さらに、メクロジンをマウス膝関節に投与した一定時間後に血液を採取しメクロジンの血漿中濃度の測定に加え、全身の臓器を組織学的に評価し局所投与による毒性の有無を検討することで臨床応用の可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度の研究は、FGFR3インヒビターの投与、凍結切片の作成、蛍光カルシウムキレート剤の投与と、既に当研究室が有する薬剤を初期には使用することができ、適宜不足分に関しては補充を行い実験を行った。本年度よりの実験では、FGFR3インヒビターやアゴニスト、大型動物の購入が必要であり、また成長軟骨版の組織学的検討のため各種染色を行う必要があるため、使用額が生じる。
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