研究実績の概要 |
椎間板変性は遺伝性を背景に環境因子が影響すると考えられているが、その関連性は不明である。エピジェネティクスはDNAのメチル化修飾(DNAメチル化)を始めとした遺伝子発現を調節する機構であり、細胞分化や組織の安定化に寄与する。一方、DNAメチル化の異常は様々な疾患の発症に関連することが報告されている。しかし、これまで椎間板変性とエピジェネティクスの関連性は明らかになっていない。本研究の目的はヒト椎間板組織のエピゲノムワイド関連解析からDNAメチル化特性を椎間板変性度別に解析し、椎間板変性の鍵となる候補遺伝子を同定し、その機能解析を行うことである。 DNAメチル化様式に変化を生じた代表的な3遺伝子 (CAPRIN1, GADD45G, CARD14)のmRNA発現、蛋白発現(ウエスタンブロット法)およびヒト椎間板組織での発現(免疫組織学的解析)に関しても検討し、3遺伝子のmRNAおよびタンパク質が発現していることを確認した。さらに、ヒト椎間板組織を変性初期群と進行期群に分類し、3遺伝子に対するタンパク発現陽性細胞数を定量化した。これら3遺伝子の発現は、ヒト椎間板組織の変性進行期群で有意に増加していることが明らかとなった。これらの研究結果より、DNAメチル化様式に変化を生じたCAPRIN1, GADD45G, CARD14はヒト椎間板において発現しており、椎間板変性の進行に関連することが示された。
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