研究課題
これまで種々の分化誘導法によりiPS細胞由来骨芽細胞系細胞の作製が行われ多くの報告がある。しかしながら、作製した骨芽細胞系細胞の特性について、十分な解析を行い、分化段階を位置付けた報告はほとんどみられない。細胞分化が進むことで増殖能が減少することが考えられ、一方で幼若な分化段階にあると高い増殖能を有すると思われるが、分化抵抗性の未分化な状態の細胞が含まれる可能性があり、安全性に不安が残る。さらに分化段階に応じたこれらの骨形成能については多くが未解明のままである。以上の理由から、本研究では各分化段階の特性を評価・解析するためにマウス iPS細胞由来の異なる分化段階の骨芽細胞系細胞を作製して特性解析を行っている。これまで種々の報告はあるが、作製方法が多岐にわたって実施されているため、分化段階の直接的な比較検討が困難であった。このため種々のcell lineを用いた場合を比較対照とし、作製した骨芽細胞系細胞の特性および分化段階を評価した。また、生体での骨再生能を評価するためにハイドロキシアパタイトをscaffold としたハイブリット培養人工骨の作製と細胞単体のゲル化を行い、それらを実験動物の皮下へ細胞移植して検討を行っている。マイクロCT解析およびHE染色、免疫染色により組織学的な骨形成能を評価している。腫瘍形成などの安全性評価については、分化誘導後から最低4週~6週以上の維持培養期間、移植後8週~12週までの経過観察期間を経て行うことでiPS細胞由来骨芽細胞系細胞の造腫瘍性について評価した。
2: おおむね順調に進展している
実験動物を使用した骨芽細胞系細胞の骨再生能の評価について、組織学的検討を現在行っているところである。最終年度に予定していた新規骨形成制御因子の探索、同定を今年度先行して行っており、いくつかの候補を同定し、解析を進めている。
各種cell lineならびに作製した骨芽細胞系細胞の組織学的検討を継続して進め、骨再生能ならびに造腫瘍性について詳細な評価データを集積する。また先行して進めていた新規制御因子の候補分子について、機能解析を行う予定である。
実験動物購入時期が年度末から少し遅延したために翌年分として次年度での請求となった。
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Science Report
巻: 10(1) ページ: 684
10.1038/s41598-019-55752-0