研究課題/領域番号 |
19K09600
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
土屋 美加子 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (90188582)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | グリコサミノグリカン / 黄色靭帯 / 腰部脊柱管狭窄症 / コラーゲン / エラスチン |
研究実績の概要 |
腰の部分の脊椎をつないでいる靭帯が厚くなることで足の痛みなどの症状が起こってくる脊椎管狭窄症という病気があります。厚くなった靭帯では、グリコサミノグリカンという水と結合してふくれる物質が増えています。このグリコサミノグリカンを酵素で分解してしまえば、靭帯の厚さを減らすことができるはずです。もしこれが正しければ、脊椎管狭窄症の患者さんで手術で厚くなった靭帯を取り除くかわりに、厚くなった靭帯に酵素を注射するだけですむようになるかもしれません。そこでこの研究では、まず酵素を使ったら、本当に厚くなった靭帯を薄くすることができるのかを調べます。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)GAG、コラーゲン、エラスチンの定量・・・・・脊柱管狭窄症の患者から切除された腰部黄色靭帯からパンチによって4.5 mm 径の円型標品を作成し、頭部、中央部、尾部の3つに分けた。標品の湿重量を測定した後凍結乾燥し、再度秤量して凍結乾燥前後の重量の差を含水量とした。 凍結乾燥標品を耐熱性タンパク質分解酵素サーモリシンを用いて70 度で消化したのち、可溶化液からエタノール沈殿によって GAG を分離し、呈色反応によって GAG 総量を定量した。さらに可溶化液を塩酸加水分解してコラーげン、エラスチンに含まれる水酸化プロリンを呈色反応で、コラーゲンに特徴的なクロスリンク構造であるピリジノリンとデオキシピリジノリン、エラスチンに特異的なクロスリンク構造であるデスモシンを質量分析で定量した。その結果コラーゲンと GAG の増加が認められた。 2)二糖解析による GAG のサブクラスの同定・・・・・可溶化液から得られた GAG を GAG 分解酵素によって二糖化し、質量分析によってそのサブクラスを同定するとともに定量を行なったところ、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸の増加が認められた。 3 )臨床データとの関連の解析・・・・・正常の黄色靭帯と比較して脊椎管狭窄症の患者から得られた黄色靭帯は、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸が増加していた。 4 )GAG分解酵素処理によるGAG・・・・・2)で決定された肥厚靭帯に多く含まれる GAG に対する分解酵素を、肥厚黄色靭帯に反応させてその反応液中に靱帯から遊離した GAG の量を定量したところ、肥厚靭帯のGAG量は著明に減少したが、水分含量の変化は明らかではなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、黄色靭帯の肥厚が特に著明な尾部にGAGが多いことを、パンチでなく黄色靭帯全体を縦横に9等分した標品を用いて明らかにする。またコンドロイチナーゼ処理が水分含量に与える影響を明らかにするためには、GAG以外の靭帯構成成分であるコラーゲン、エラスチンによって保持される水分量の大きさを評価する必要がある。また水分含量でなく、物理的性質による評価についても検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行のための試薬の一部を、あらかじめ在庫していたものを使用したため。在庫はなくなったので、この研究費を使用する予定である。
|