研究実績の概要 |
2019年度は、本研究の核ともいえる燃焼式/電子タバコエアロゾル抽出液(CSE/H-CSE)を調整する実験系を確立することに成功した。50mlファルコンチューブにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)35mlを満たし、ガラス管2つを通した穴あきゴム栓で密閉空間を作る。ガラス管の片方シリコンチューブを介してタバコに接続し、もう片方のガラス管はシリコンチューブを介して50mlのシリンジに接続する。タバコを点火/加熱した状態で50mlシリンジを吸引すると、タバコ吸入気体がPBS内でバブルとして発生し溶解させることで、抽出液を調整できる。吸入プロトコルは過去のCSE作成報告に基づき、35ml/2秒/回の吸入を30秒に1回行う(Gellner, Curr Protoc Neurosci. 2017)。1/3/6/9本で調整した抽出液濃度を吸光度OD320nmで定量化するといずれの検体も本数依存性に吸光度が上昇し、近似直線を描くことができた。3本で調整されたCSE/eCSEを100%濃度と規定し、吸光度OD320nmを測定し濃度を標準化する指標とした 。この手法によって得られた溶液を希釈し各濃度のCSE/H-CSEを用いて実験を行うことができる。さらに、マウス筋線維芽細胞であるC2C12に0, 0.1, 1, 5, 10, 20, 30, 50%のCES/H-CSEを投与し6, 24, 48時間でMTT assayを行ったところ、濃度・時間依存性にviabilityの低下を認めた。いずれの抽出液も5%濃度では48時間経過してもcell viabilityはcontrolと比較し保たれていること、同じ濃度においてはviabilityはcontrol>H-CSE群>CSE群であった。
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今後の研究の推進方策 |
In vitro study: 5%濃度CSE/H-CSEをC2C12の投与しさらにBMP-2を投与することによって骨分化を誘導する。2日おきにmedium changeを行い1週間でALP活性、アリザリンレッド染色、qPCRを行い骨分化を評価する。同様の実験を異なるcell lineであるST2細胞においても行い、電子タバコの骨分化へ及ぼす影響を燃焼式たばこと比較する。これらの実験系が確立されたのちヒト由来骨髄間葉系細胞(MSC)を骨分化培地で培養し同様に抽出液の影響を評価する。骨折時の骨癒合に重要な役割を果たすとされているMSCの骨分化阻害作用を比較検討することがin vitro評価の目標である。 in vivo study: ラット大腿骨骨折モデルを作成し、100%CSE/H-CSE1mlをday 0,5,10,15,20に腹腔内投与する。4週で犠牲しさせμCTにより仮骨形成量を比較検討する。
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