多発性外骨腫症 (Multiple Hereditary Exostoses: MHE) は、全身の骨や軟骨に良性の腫瘍が発生する遺伝性疾患として知られている。先行研究から、MHEは、 プロテオグリカンの糖鎖合成酵素をコードするExt1遺伝子やExt2遺伝子の機能欠失型変異によって発症すると考えられている。本研究では、Ext1やExt2 の機能欠失変異による骨軟骨腫の発症の分子メカニズムの一端を解明すること目的としている。2020年度にゲノム編集によるExt1遺伝子のノックアウトの手法を確立し、2021年度は、マウス軟骨細胞株の内在性Ext1遺伝子を同様の手法でノックアウトし、クローン化した細胞を取得した。本クローン化細胞のExt1遺伝子の欠失をシークエンス解析によって確認した。Ext1ノックアウト軟骨細胞を高密度で培養し、アルシアンブルー染色にて、軟骨基質を染色した結果、コントロールの細胞に比較して、Ext1ノックアウト細胞は、軟骨細胞分化が亢進している傾向が認められた。さらに、遺伝子発現解析によって、Ext1ノックアウト細胞は、軟骨形成や骨形成に重要なBMPシグナルが亢進していた。本研究結果から、先行研究同様に、Ext1変異に起因した骨軟骨腫の発生には、BMPシグナルの亢進が重要である可能性が示唆された。本研究で確立したin vitroの解析系を駆使することで、MHEに対する治療候補薬をスクリーニングすることができると考えられる。
|