研究実績の概要 |
変形性関節症に伴う疼痛は患者の生活の質、日常生活動作を著しく障害するため、健康寿命の延伸には疼痛治療が極めて重要である。昨年度までに膝蓋下脂肪体組織で発現する神経ペプチドと疼痛との関連性を検討した結果、Peptide Lv, Apelinの発現と疼痛スコアとが相関することを明らかになった。本年度はこれらの神経ペプチドの産生細胞を同定すべく、間質血管細胞群(stromal vascular fraction, SVF)を磁気ビーズにより分画し、検討を行った。人工関節置換術時に変形性関節症患者から採取した膝蓋下脂肪体を検討に用いた。コラゲナーゼ後、遠心し、SVFを得た。ビオチン標識CD31抗体とストレプトアビジン標識磁気ビーズを用いてCD31陽性の血管内皮細胞分画を得た。その後、陰性分画とPE標識CD14抗体を用いたマクロファージ分画と間質細胞分画とに分けた。これらの細胞からRNAを抽出後、リアルタイムPCRを用いてPeptide LvおよびApelinの発現を検討した。その結果、Apelinの発現はマクロファージ分画で高く、Peptide Lvの発現は間質細胞分画で高かった。これらの結果から、マクロファージおよび間質細胞によって産生される神経ペプチドによって疼痛が制御されている可能性が示唆された。Peptide LvやApelinは変形性関節症疼痛治療の新たなターゲットになるかもしれない。
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