研究課題/領域番号 |
19K09607
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 拓 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90445304)
|
研究分担者 |
田口 哲志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (70354264)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 生体接着剤 / タラゼラチン / フィブリン / 神経接着 / 神経 / sutureless |
研究実績の概要 |
神経切断モデルを用いてタラゼラチンでの神経接着について、従来の縫合やフィブリン製剤と比較検討を行った。新鮮屍体の神経断裂モデルを用いた接着強度実験と、ラットの神経断裂モデルを用いた神経機能回復実験の2種類の実験を行った。接着強度実験では指神経を切断し,従来の縫合にタラゼラチンを加えた群・縫合のみ行った群・タラゼラチンで接着した群・従来のフィブリンで接着した群の4群(各群n:20)を作成した。強度試験から、タラゼラチンはフィブリンの3倍以上の強度を持つことが示された。 機能回復実験ではWisterラットの坐骨神経を用いた。神経を縫合してタラゼラチンを加えた群・縫合のみの群・タラゼラチンで接着した群・フィブリンで接着した群・神経を切断のみした群・展開のみした群(sham)の6群に分けて観察し、8週後に各群で肉眼所見・前脛骨筋重量・歩行解析・組織学的所見の評価を行った。肉眼所見は処置した部位の神経の連続性の有無の確認と接着剤の残存の有無を確認し、タラゼラチン群とフィブリン群の両群で全例神経に連続性を認めた。前脛骨筋重量、坐骨神経機能指数、歩行解析、組織学的所見ではもタラゼラチン群はフィブリン群と比較して回復が良好である傾向を示した。また縫合糸と比較しても同等の坐骨神経の機能回復ならびに組織回復が認められた. これらの実験結果から、タラゼラチンは従来のフィブリンと比較して強い強度をもち、機能回復においてもより良好な回復の傾向を示す結果を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規生体接着剤のタラゼラチンが神経接着において生体親和性を示し、フィブリンより高い接着強度を示すことができたから。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、タラゼラチンはフィブリンより強い接着強度を示したが、従来の縫合糸にはまだ強度は及ばない。そのため、今後、強度を改良し、縫合糸と同等になるような接着剤を開発する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナウイルスの影響で研究が中止、中断となる時期が長く、研究を次年度に持ち越したから。 次年度においては当初の当該年度の計画通り、動物実験における動物購入、飼育費、試薬費を中心とした経費および接着剤の開発、購入費に使用する予定である。
|