研究実績の概要 |
昨年度、糖尿病に伴う筋分化の抑制および筋分解の亢進に関与する亜鉛トランスポーターの候補としてZip9およびZip13(ともにゴルジ体に発現)を見出した。今年度は、まずこれらの亜鉛トランスポーターがオートファジー系とユビキチン・プロテアソーム(UPS)系のどちらのタンパク質分解系に関与するかの詳細を明らかにするため、それぞれのマーカータンパク質の発現を検討した。Zip9の内因性発現抑制はUPS系のMuRF-1およびAtrogin1の発現を亢進させ、Zip13の内因性発現抑制は、オートファジー系のマーカーであるLC3Ⅱの発現を亢進させた。さらに、Zip9およびZip13が筋分解および筋分化を制御する分子機序を検討したところ、Aktタンパク質のリン酸化およびFoxO1の活性抑制を介して、筋分化および筋分解を制御することが示唆された。 また本年度は、糖尿病性骨粗鬆症に関与する亜鉛トランスポーターの同定も試みた。ストレプトゾトシン誘発性糖尿病に伴うマウス脛骨での亜鉛トランスポーターの発現変化を網羅的に解析した結果、細胞膜に局在するZiP6, ZiP10およびゴルジ体に局在するZiP9, ZnT4, ZnT6の発現低下がみられた。一方、糖尿病マウスに亜鉛添加食を4週間与えた結果、骨組織のZiP6, ZnT4の発現が回復した。そこでこれらのトランスポーターの骨分化に対する役割を骨芽細胞にて検討したところ、ZiP6の内因性発現抑制により、骨分化マーカーの発現減少がみられた。この分子機序を検討した結果、ZiP6の内因性発現抑制により、骨分化に関与するAktシグナルおよびp38MAPKシグナルの減弱がみられ、これらのシグナルの減弱は糖尿病マウスの骨組織においても認められた。これらのことから、糖尿病に伴う骨分化障害にZiP6の発現低下に伴う亜鉛シグナル障害が関与することが示唆された。
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