研究実績の概要 |
1型糖尿病モデルマウスの萎縮した筋組織では、ゴルジ体から亜鉛を細胞質へ運び出すZip9, Zip13のみならず、ゴルジ体へ亜鉛を輸送するZnT6の発現の減少がみられた。そこで、C2C12筋細胞を用いたZnT6のノックダウン実験により、筋機能におけるZnT6の役割を検討した。その結果、ZnT6の発現低下は筋菅形成を抑制することが明らかとなった。そして、その分子機序として、筋分解系(ユビキチンプロテアソーム系とオートファジー)の亢進が関与していることが示唆された。 また、2型糖尿病病態では、血中グルココルチコイド(GC)濃度の増加が、筋量および筋機能低下の原因となることが示唆されているため、一昨年度に引き続き、GC誘導性筋萎縮における亜鉛トランスポーターの役割についても検討した。分化させたC2C12筋菅細胞に合成GCを添加したところ、細胞膜に局在する亜鉛トランスポーターZip10の発現が一過性に増加した後、著明な減少がみられた。そこでsiRNAを用いてZip10をノックダウンしたところ、GCによる筋分解系の亢進を増強させ、筋菅の萎縮を促進させることを明らかにした。また、筋菅細胞におけるZnT6およびZip10のノックダウンは、筋量と骨量を負に制御する液性因子のミオスタチンの発現を著明に増加させることを見出した。 本研究成果から、1型、2型糖尿病病態に伴う筋と骨の機能低下の機序に、筋細胞の亜鉛トランスポーターの発現変化による亜鉛シグナルの異常と、それに伴うミオスタチンなどの筋由来液性因子の分泌異常が関与していることが示唆された。
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