研究課題
昨年度は主にラット椎間板変性モデルの開発,ならびに脊椎腫瘍に対する新規治療法開発に向けた前段階の試験として,新規抗腫瘍薬の有用性を検討した.椎間板変性モデルの開発では,コンドリアーゼ(商品名ヘルニコア)の椎間板注入による椎間板組織を経時的に解析した.本モデルの開発にあたっては,コンドリアーゼの容量・濃度など条件設定に難渋したが,組織学的にヒト椎間板変性に類似した変化を誘導しえる至適条件の設定に至った.今後,免疫染色にてヒトの椎間板変性との組織学的比較検討を行い,椎間板モデルとしての再現性・有用性を検討する予定である.また,椎間板変性の研究と並行し,脊椎腫瘍に対する新たな低侵襲治療開発の前段階として,原発性悪性骨・軟部腫瘍に対する各種薬剤の抗腫瘍効果,肺転移抑制効果を検討した.マウス骨肉腫LM8細胞株モデルを利用し,トラベクテジンの腫瘍作用を検討したところ,本薬剤は肺転移に対し,極めて強力な抑制作用を有することが明らかとなった.そのメカニズムをin vitroにて検討したところ,本剤は細胞内のシグナル伝達経路であるERK MAP kinaseの活性を阻害し,骨肉腫細胞の遊走・浸潤を抑制することが,明らかとなった.これらの所見は,英語論文にまとめ発表した.また,微小管形成阻害薬であるエリブリンは,滑膜肉腫細胞に対し強い抗腫瘍作用を示すことを昨年度までに明らかにしたが,さらに解析を進めたところ,本剤は腫瘍内の微小血管数を増加させ,腫瘍内低酸素を是正する作用を有することが示された.興味深いことに,新生血管の誘導は古典的な発芽血管新生ではなく,重積血管新生を介したものであることが,組織学的に示唆された.これらの所見は,英語論文にまとめ発表した.今後,脊椎腫瘍に対するこれらの抗腫瘍薬の有用性をマウスモデルにて検討の予定である.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
BMC Musculoskeletal Disorders
巻: 23 ページ: 256~
10.1186/s12891-022-05210-2
Journal of Clinical Medicine
巻: 11 ページ: 1504~1504
10.3390/jcm11061504
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 570 ページ: 89~95
10.1016/j.bbrc.2021.07.033
Journal of Bone and Mineral Research
巻: 36 ページ: 1481~1491
10.1002/jbmr.4324
Journal of Orthopaedic Research
巻: 40 ページ: 945~953
10.1002/jor.25105
Journal of Orthopaedic Science
巻: - ページ: -
10.1016/j.jos.2021.03.003
10.1016/j.jos.2021.02.018
Bone Reports
巻: 15 ページ: 101148~101148
10.1016/j.bonr.2021.101148
別冊整形外科
巻: 79 ページ: 18-21
日本整形外科学会学雑誌
巻: 95 ページ: 1144-1160