研究課題/領域番号 |
19K09615
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
志賀 康浩 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (90568669)
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研究分担者 |
高山 直也 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (10584229)
大鳥 精司 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (40361430)
折田 純久 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (60638310)
稲毛 一秀 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (80793629)
曽根 正光 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (90599771) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | iPS細胞由来人工巨核球・血小板凍結乾燥製剤 |
研究実績の概要 |
外傷による骨折や腰椎変性疾患等に対し骨癒合による安定化は非常に重要であり,我々は自己血漿の濃縮により得られる多血小板血漿(Platelet Rich Plasma: PRP)に着目してきた.PRP中には各種豊富な成長因子が含まれ,それらが複合的に作用し旺盛な組織修復能を持ち我々の先行研究において,PRPが感染や拒絶反応の危険性なく骨癒合を促進することを報告しており,PRPが将来性のある治療法であることが示唆されてきた.その一方,臨床的には,高齢者や多発外傷を含む全ての患者の自己血由来PRPを安定して調達することは困難である.我々の研究分担グループでは,iPS細胞技術を用いてヒト白血球抗原(HLA)を欠損させ,自己免疫反応の誘発を抑制したユニバーサルタイプの人工血小板を大量に生産する手法を確立した.本研究では血小板による骨修復の根源的メカニズムに基づくユニバーサルタイプの高機能人工血小板を開発し,安全性の高い画期的な骨癒合技術を開発すること,及びその安全性・有効性の確認を目的とする. 令和元年度は,共同研究グループとともに特定の遺伝子を強制発現していないiPS細胞由来人工巨核球・血小板製剤の作成を確立し,その有用性をラット腰椎癒合モデルで確認し,in vivoの評価系を確立した.さらに人工血小板のもとになる巨核球株に骨癒合促進することが期待される因子(BMP2, VEGF, FGF2)を導入した株をそれぞれ作製し,次年度にin vitroのスクリーニング系への準備をほぼ完了している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り, iPS細胞由来人工巨核球・血小板凍結乾燥製剤の作成が安定的に作成可能となり,ラット腰椎癒合モデルでの使用確認を繰り返し,in vivoの評価系を確立出来た. さらに人工血小板のもとになる巨核球株に骨癒合促進することが期待される因子(BMP2, VEGF, FGF2)を導入した株をそれぞれ作製し,製剤内の成長因子濃度が十分であることを確認できた.令和元年度の詳細な成果として,具体的にはiPS人工血小板の特性解析を実施し、骨癒合促進に関与が期待される複数因子の発現の有無を確認したこと,レンチウイルスベクターを用いて、骨癒合促進に関与が期待されるBMP2, VEGF, FGF2をさらに恒常的に過剰発現する不死化巨核球細胞株を樹立したこと,恒常的な強制発現システムであるが、巨核球の成熟および血小板産生には影響しないことを確認,これらの巨核球および血小板からは大量の増殖因子(BMP2, VEGF, FGF2)が放出されることをELISAを用いて確認したこと,間葉系幹細胞(MSC)を用いた骨芽細胞分化系を確立したこと,ラット腰椎癒合モデルを用いて、人工骨単独と比較してiPS細胞由来人工血小板のフリーズドライ製剤の有意な骨癒合促進を確認したこと等が挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度までの研究内容の再現性を確認していくとともに,以下の計画を共同研究グループと共に遂行する予定である。 一つ目として,各高機能人工血小板を単独あるいは様々な比率で混ぜ,ヒト骨髄由来のMSCに作用させる.骨芽細胞への分化促進能力を骨芽細胞の初期マーカーであるALPの活性や骨分化マーカーの発現レベルのRT-qPCR解析を通じて、ハイスループットに評価し、骨化能力の最も高い高機能人工血小板の組み合わせ及びその混合比率を決定する. さらには,各分泌因子の下流で活性化されるシグナル経路の阻害薬を用い,骨癒合促進に寄与するシグナルマップを作成しメカニズムを明らかにする. そして,上記スクリーニングで決定した有望な配合条件を候補として、ラット腰椎癒合モデルに適応し、in vivoでの評価を行う。マイクロCTスキャンにより手術部位を撮影し,骨形成体積定量と取り出した治療後の骨への3点屈曲試験方法を用いた機械的強度の定量測定を指標に評価する.同時に,腫瘍形成や過剰炎症・感染の有無を確認し安全性についても評価する. 上記基礎実験を重ね,将来的な人での臨床研究に応用できるトランスレーショナルリサーチトンして確立させていくのを目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度研究に関しては既存の研究物品および共同研究グループによる支払いでの対応がおおかった.次年度は,本助成金額から当初予定していた費用の多くの支出がある見込みである.
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