骨系統疾患や慢性関節炎、人工関節インプラント周囲などに生じる溶骨症に対する有効な治療法確立のため、その発症病理として破骨細胞の遊走性亢進に着目し、新たな分子的介入法を探索的に検討する計画を進めた。すなわち溶骨症モデルとして、アクチン分子重合を制御する細胞骨格制御因子プロフィリン1を破骨細胞で欠損するマウスを遺伝子改変マウスの交配により作成して以下の検討を行った。まず破骨細胞におけるプロフィリン1欠損の影響を培養系で検証するため、骨髄由来の破骨細胞前駆細胞においてプロフィリン1遺伝子をsiRNAによってノックダウンし、その影響を破骨細胞誘導系において検討した。(1)分化誘導を促進するか(2)分化速度を速めるか(4)細胞融合を促進するか(5)細胞遊走を促進するか(6)骨吸収を高めるかについて検討した。また細胞骨格制御に関わるArp2/3阻害薬を培地に加え、その影響を検討した。つぎに本遺伝子欠損マウスの溶骨症性病態を詳細に解明するため、4週齢、8週齢マウスに加えて20週齢、34週齢マウスの大腿骨および頭蓋骨の形態変化について解析した。さらに治療法開発へ向けた探索として、細胞骨格制御因子を阻害する薬物を5週齢マウスに週2回投与を開始し、3週間経過した8週齢の時点での効果を解析して有効な治療法開発の基盤として解明を進めた。この溶骨性病変の解剖学的広がりと組織学的な病態をX線計測や組織形態解析によって解明し、破骨細胞の細胞骨格制御の変調が実際に遊走性を亢進させ、結果として広範囲の溶骨症性病変を生じさせることを明らかにした。最終年度はとくに細胞骨格因子の制御因子への薬物介入によりこの発症を阻止する方策を検討し、破骨細胞による骨吸収抑制と運動抑制が本モデルマウスの溶骨性病変としての骨量減少を有意に改善するだけでなく、成長に伴う骨変形に対して特定の効果を表すことを明らかにした。
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