研究実績の概要 |
合成3次元担体であるPLGAに羊膜由来細胞外基質をコートして作製した軟骨修復用生体材料であるECM-PLGAの軟骨修復促進効果に寄与する生物学的活性メカニズムを解明する研究を行っている。我々が証明を目指している抗炎症作用と線維化抑制効果にかかわるエフェクター細胞として、マクロファージがどのような役割を果たすかを調べる実験を行った。羊膜由来細胞外基質がマクロファージ分化と極性に与える影響を調べるために、ECM-PLGA上にヒト末梢血静脈由来単球からM1-likeに分化誘導したマクロファージを播種し、培養を行い、マクロファージ極性を示す細胞表面抗原(CD68, CD80, CD86, CD163, CD206)の発現や、炎症性サイトカイン(IL-1β, IL-6, IL-8, IL-10, TNFα)の発現を解析した。ECM-PLGA上で播種・培養した場合、コントロールである通常の培養皿上での培養時と比較して、マクロファージマーカーの遺伝子発現量がM1, M2に関わらず全体に低く、極性を示すM1/M2比についてもマーカー毎のばらつきが大きく信頼しうるデータが得られなかった。したがってマクロファージの極性を判断するに至っていない。さらに、培養上清中の炎症性サイトカインの分泌量はECM-PLGA群で有意に多い結果であった。ECM-PLGAが炎症タイプ(M1)マクロファージを抗炎症タイプ(M2)に極性転換させて炎症性サイトカインの分泌を減少させることで線維化抑制につながるとする我々の仮説と異なる結果で、ECM-PLGA上で培養することでマクロファージの脱分化などが起こっている可能性が考えられたが検証に至っていない。
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