研究課題/領域番号 |
19K09621
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒田 隆 京都大学, 医学研究科, 助教 (20616099)
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研究分担者 |
田畑 泰彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (50211371)
西谷 江平 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (70782407)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / 抗菌薬 / FGF / 局所投与 / 骨髄炎 |
研究実績の概要 |
ゼラチンハイドロゲルにバンコマシン、ゲンタマイシンを含有させ、in vitroにおいて黄色ブドウ球菌の増殖抑制を検討した。抗菌薬含有なしのハイドロゲルを培養液に加えた場合は黄色ブドウ球菌発育に効果は見られないが、バンコマイシン、ゲンタマイシンを含有させたハイドロゲルを培養液に加えた場合は黄色ブドウ球菌発育阻止を認めた。動物実験で有効な効果を得るためには、数日間のハイドロゲルからの抗菌薬の徐放が必要となると考えるため、ハイドロゲルからの抗菌薬の徐放速度の検討を行った。ゲンタマイシン含有ハイドロゲルからPBS内に徐放される抗菌薬の濃度をHPLC法で測定したところ、24時間以内に、ほぼ全てのゲンタマイシンが流出していた。この実験を数種のゼラチンハイドロゲルで繰り返し行ったが、24時間以上の徐放は確認できなかった。 動物骨髄炎モデルの確立のため、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌を付着させたインプラントをマウス脛骨に挿入して、感染成立を確認した。黄色ブドウ球菌感染では顕著な骨破壊と膿瘍形成を認めたが、表皮ブドウ球菌ではほとんど骨破壊を認めなかった。しかし、黄色ブドウ球菌ほどではないが、非感染インプラントに比べて、表皮ブドウ球菌感染インプラントも、有意なゆるみを認めた。抗菌薬全身投与の効果を確認するため、黄色ブドウ球菌脛骨骨髄炎モデルを使用して、セファゾリン、ゲンタマイシン、バンコマイシン単独および、リファンピンとの組み合わせ投与を行った。感染3日目までに抗菌薬を投与した場合、ゲンタマイシン+リファンピン、バンコマイシン+リファンピンでインプラント上のバイオフィルムの有意な減少と、細菌量の有意な減少が確認されたが、感染7日目で抗菌薬を投与した場合、どの組み合わせでも効果はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼラチンハイドロゲルへのバンコマイシン及びゲンタマイシンの含有は可能であり、in vitroでは黄色ブドウ球菌の増殖抑制効果が確認できているが、動物実験での十分な効果が期待できる、最低数日間の継続した抗菌薬徐放が得られるまでには至っていない。今後、他のハイドロゲルの検討や、抗菌薬をポリ乳酸やハプテンなどの結合させた上でのハイドロゲル含有などでの徐放効果の検討が必要である。 黄色ブドウ球菌及び表皮ブドウ球菌インプラント関連骨髄炎の動物モデルの確立は終了し使用可能である。黄色ブドウ球菌骨髄炎モデルへの抗菌薬全身投与の効果は感染初期に投与した場合にのみ限定的であるが認められた。動物実験での抗菌薬とFGFとのシナジー効果の検討は次年度以降の検討になる。
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今後の研究の推進方策 |
ハイドロゲルからの抗菌薬の継続した徐放を得るために、他のハイドロゲルの検討や、抗菌薬をポリ乳酸やハプテンなどの結合させた上でのハイドロゲル含有などの検討が必要である。抗菌薬とF G Fを両方含有したハイドロゲルによるインプラント感染の治療を目指しているが、抗菌薬の徐放が難しければ、抗菌薬は全身投与もしくは、浸透圧ポンプなどを使用した局所投与を行い、FGFを含有したハイドロゲルを感染部位に使用することによるシナジー効果の検討を考慮する。また、現在のインプラント骨髄炎モデルは、脛骨に感染インプラントを挿入したシンプルなモデルであるため、さらに臨床に即した骨折感染性偽関節モデルなどの作成を行う予定である。また、バイオフィルム感染を制御するための局所抗菌薬の必要濃度を検討するため、確立された骨髄炎モデルのインプラントを使用し、インプラントに形成されたバイオフィルム内の細菌発育阻止濃度の検討を行う。
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