私たちは、破骨細胞特異的に発現する受容体群の中に、骨の鮮度を認識する受容体があると仮説を立て、昨年度までに候補分子であるパターン認識受容体のトリプルノックアウトマウスの樹立を試み、発生しない結果を得ていた。 この結果を受け、本年度は、トリプルノックアウトからダブルノックアウトに切り替えて樹立を試みた。加えて、CRISPR-Cas9 systemを用いた発生工学的手法の改善も試みた。その結果、Gene AとGene Bのダブルノックアウトマウス系統の樹立に成功した。またAとBのシングルノックアウトも同時に樹立することに成功した。これまでシングルノックアウトは、しばしばGenetic compensation(近い配列をもつ遺伝子、例えばパラログの発現上昇が起こり代償される現象)により表現型が現れないことが報告されている。Gene Aとgene Bはパラログに当たるため、今回得られたダブルノックアウトはシングルノックアウトでは得られない表現型を解析することができる可能性がある。Gene Aノックアウトマウスの骨髄マクロファージを破骨細胞に分化誘導した結果、破骨細胞形成が顕著に促進された。一方で、プレリミナリーな実験結果だが、このノックアウトマウスの破骨細胞数あたりの骨吸収は抑制されていた。 今回の骨吸収能と破骨細胞数が必ずしも一致しない結果は興味深く、現在骨吸収機構における役割を解析中である。
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