研究課題
ヒアルロン酸を高濃度で含有する関節液をヒアルロン分解酵素で処理することで再現性良く、高精度で回収できるように既知の方法を改良した。回収された物質が粒子径分布、マーカータンパク確認(western分析)、RNA含量測定等で細胞外であることを確認した。我々は変形性関節症(OA)患者の関節液中で上昇し、軟骨マトリックスを分解するマトリックス分解酵素の発現を誘導する炎症性サイトカイン(Interleukin-1β(IL-1β))が軟骨細胞の産生するエクソソームでのCD9(テトラスパニン29)発現を増加していることをwestern分析により明らかにした。患者滑液由来エクソソームにおいてもCD9の発現を確認している。このCD9は細胞接着とシグナル伝達を介して、炎症等に関連すると考えられており、OA患者滑膜で発現が上昇すること(Bull Hosp Jt Dis. 2005;63(1-2):63-9)、CD9ノックアウト(KO)マウスを用いたOAモデルの一部では軟骨損傷が少ないなどの報告(Biomed Res.2016; 37(5):283-291)もありOAへの関与が示唆される。更に、炎症性サイトカイン刺激により軟骨細胞自身のCD9発現を誘導することをRT-PCR、細胞免疫染色で明らかにした。エクソソームを蛍光標識することにより軟骨細胞へのエクソソームの取り込みを確認した。ダイナミン阻害剤を用いるとエクソソームの取り込みがほとんど無くなったことから、エクソソーム取り込みの主たる経路はクラスリンを介したエンドサイトーシスであることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
臨床検体を用いた臨床試験が承認・実施されていること。患者関節液からエクソソームを効率よく回収する方法を確立できていること。軟骨細胞によるエクソソームの取り込みを確認し、炎症性サイトカインで刺激した軟骨細胞、軟骨細胞から産生されるエクソソームの変化を見出していること。
軟骨細胞の培養上清(無処理、炎症性サイトカイン刺激、炎症性サイトカイン刺激+メカニカルストレス)を回収し、エクソソームを精製する。エクソソームからmiRNAを回収、RNAseq、デジタルPCRにて解析を行う。我々はメカニカルストレスが炎症性サイトカインによるマトリックス分解因子の発現が抑制されること、マトリックス分解に関連するmiRNAを見出している。エクソソーム含有miRNA構成と処理との関連性を解析する。また、エクソソーム構成タンパクの処理による変化をM/S分析で検出していく。
参加を予定していた学会がコロナ禍で延期されたため、次年度使用が生じたが、当該予算については、次年度開催される研究発表の旅費などに充当する予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Experimental Cell Research.
巻: 383 ページ: 111556
10.1016/j.yexcr.2019.111556.
Journal of Nutrition and Food Sciences
巻: 9 ページ: 9763
10.35248/2155-9600.19.9.763
https://okadaihirohatalab.jimdofree.com/