研究課題/領域番号 |
19K09629
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
弦本 敏行 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (60304937)
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研究分担者 |
佐伯 和信 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (80195966)
大神 敬子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (80812924)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大腿骨 / 皮質骨 / 骨質 / CT画像 / 骨粗鬆症 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
交付申請時の研究計画に従い、実際の研究を継続中である。 (1)大腿骨骨幹部のCT画像の取得;当教室保管の現代人骨格標本の右大腿骨90体(男性46体、女性44体)のCTを撮影し、各標本の0.5mm間隔の横断面DICOMデータを取得した。それらに関して、皮質骨領域判別のための閾値を決定した。さらに、大腿骨の横断面CT画像において皮質骨領域内のCT値分布を解析する目的で作成したMicrosoft Excelマクロ解析シートを用いて、各標本より等間隔に抽出した10横断面の画像解析を実施した。また、大学に搬入された約30体の解剖体に関しても右大腿骨のCT画像を取得した。 (2)有限要素法を応用した対象大腿骨の力学的評価;2019年度は骨組織の解析に特化した有限要素法解析ソフトMECHANICAL FINDER 9 (Standard edition)を導入したが、2020年度にこれをExtended editionへバージョンアップした。 (3)ソフトウエアの立ち上げ作業を行った後、上記の大腿骨に関して、取得したCT画像情報を解析した。そのうち、まず女性の右大腿骨骨格標本44体を対象にして有限要素解析モデルを構築した。荷重条件を定めた上で、生体力学的パラメータ、各種応力、および各種ひずみとひずみエネルギー密度を解析した。 (4)大腿骨骨格標本の骨幹部横断面の全領域を含む非脱灰研磨標本を作製した。あらかじめ30歳代男性の右大腿骨のCT画像を取得したのち、研磨標本を作製した。それらを用いて円偏光顕微鏡による横断面全体画像の取得し、さらにその一部に関しては走査電顕画像を作成し、CT画像解析結果との照合を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)約100体の骨格標本を対象とし右大腿骨のCT画像を取得した。さらに、より生体に近い状態のCT画像を解析する目的で、ご遺体の大腿骨CT画像(Autopsy imaging画像)を取得した。 (2)Microsoft Excelマクロ解析シートを完成させることができた。なお、交付申請時の計画段階では、長管骨骨幹部の皮質骨を構成する2次オステオンにおけるコラーゲン線維配列の局在特性の影響を示す高CT値領域のみを解析対象とする計画であった。しかし、皮質骨の骨質の評価に際しては、骨髄に接する領域におけるオステオンの多孔化、すなわち皮質骨の海綿骨化領域の解析も必要と考えたため、低CT値領域の解析も行うことができるように解析シートを工夫した。 (2)有限要素法解析ソフトMECHANICAL FINDER 9 Standard versionの導入およびExtended editionへのアップデートに関しても順調に完了している。試行目的で実施した大腿骨骨格標本のうち女性44体に関して有限要素モデルを構築・解析し、専門誌上にoriginal articleとして公開することができた。 (3)大腿骨骨格標本の骨幹部横断面の全領域を含む非脱灰研磨標本を作製した。あらかじめ男性右大腿骨のCT画像を取得したのち、研磨標本を作製した。それらを用いて円偏光顕微鏡による横断面全体画像の取得し、さらにその一部に関しては走査電顕画像を作成し、CT画像解析結果との照合を行った。これらから、CT画像におけるCT値分布に影響を与える因子としては、予想していたOsteonのMorphotypeの分布状態ではなく、むしろ各断面に多数存在するそれらの中心管の大きさと密度の影響が大であるという結果を得た。男性大腿骨46体に関する解析はほぼ終了したので、その解析方法の紹介と得られた結果に関して2021年3月の日本解剖学会において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の2021年度においては、以下のように研究を遂行する予定である。 昨年度に男性46体の右大腿骨に関する解析を実施したので、同様の解析を女性大腿骨44体に関して実施する。また、詳細な検討を加えた解析を実施したのち、専門誌上で発表する計画である。さらに、得られたご遺体の大腿骨CT画像(Autopsy imaging画像)に関しても同様の解析を実施して、より臨床に近い状況においても解析が可能であることを確認する予定である。最終的には大腿骨骨幹部全体の有限要素解析の解析結果を考慮して、生体力学的意義を考察する計画である。これらの結果に関して考察し、本研究計画の目標の達成、すなわち長管骨皮質骨の骨質に関する臨床応用可能な新規の骨粗鬆症に関する評価方法を提案したいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会出張が中止になったため。
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