研究課題/領域番号 |
19K09630
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
間中 智哉 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (50382122)
|
研究分担者 |
大田 陽一 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (50633484)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 関節軟骨 / 永久軟骨細胞 / サイクリックAMP |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、サイクリックAMP(cAMP)が、関節軟骨、特に表層に存在する永久軟骨細胞に与える影響とその機序を解明することである。関節軟骨の変性が主な病態である変形性関節症の患者数は、超高齢社会を迎えて急速に増加している。これら運動器疾患の進行予防は、健康寿命延伸に直結する。これまで、EP2受容体選択的アゴニストによる軟骨欠損修復作用やPTH(1-34)の関節内投与による軟骨変性抑制効果の報告がされてきたが、これらの薬剤には細胞内cAMP濃度を上昇させるという共通の作用がある。そこで、本研究では永久軟骨細胞に対するcAMPシグナルの効果に着目し、cAMPの関節軟骨表層に存在する永久軟骨細胞に対する作用機序に焦点をあて研究を遂行する。 まず、生後3-5日のマウス骨端部の軟骨細胞を単離、培養し、細胞膜透過性cAMP誘導体であるN6,2′-O-ジブチリルアデノシン3′,5′-サイクリック一リン酸 ナトリウム塩(db-cAMP)を;濃度:0.5mM、0.75mM、1mMを添加した。RNAを経時的に回収し関節マーカーとしてLubricin/PRG-4の発現量を、また、軟骨細胞分化マーカーとしてTypeⅩコラーゲンの発現量を Real time RT-PCR法を用いて評価を行った。dbcAMP:1mM投与にてLubricin/PRG-4の発現量は非投与群と比較して有意に上昇し、TypeⅩコラーゲンに関しては非投与群と比較して有意に減少した。 本研究では今後、さらに軟骨細胞を表層細胞(surface layer cell)とその深層にある成長軟骨細胞に分離し、これら結果からdbcAMP濃度1mMを中心に実験をすすめていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度では軟骨細胞に対するdbcAMP投与の至適濃度の検索を、まずはマウス骨端部の軟骨全層の細胞(表層細胞+成長軟骨細胞)を用いて行った。培養条件や本実験におけるdbcAMPの至適濃度等の検索に時間を要したため当初の予定よりやや遅れていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
関節軟骨表層細胞分化に対すサイクリックAMPの効果についてLubricin/PRG-4、PTHrPなどその他関節マーカーを中心としてさらに検討を行う。今後はそれら条件をもとにdbcAMP投与下培養を行った関節軟骨表層細胞(永久軟骨細胞)を一塊としてヌードマウスの皮下に細胞移植し、形成されたペレットを組織学的に解析するin vivo研究を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度に予定していた、dbcAMPによる関節軟骨表層細胞分化に対するin vitroの実験が遅れていたため、その実験に必要な備品、消耗品等の購入をしていなかったため。 (使用計画)関節軟骨表層細胞におけるcAMPの効果を評価するin vitro実験に必要な関節マーカや軟骨細胞分化マーカーなどのprimerやReal time RT-PCR法に必要となる解析試薬等、その他細胞移植実験に必要な備品、消耗品や組織学的研究に必要な試薬、抗体等、実験動物としてヌードマウスの購入等に使用する。また、生後3-5日のマウス骨端部の軟骨細胞の単離を行うため、実験動物としてC57BL/6J妊娠マウスの購入にも使用する予定である。
|