研究課題
サルコペニアは、健康寿命延伸のため重要で、近年では筋量に加え質の評価も着目されている(EWGSOP2 2018)。本研究では、加齢による筋肉減少が最も著著な大腿のCT断面像にて筋断面積(CSA)や(脂肪化を反映する)CT値などの評価を用い、加齢変化や運動機能等との関連を明らかにする目的で検討してきた。国立長寿医療研究センター内データベースを活用した。今年度は(A)外来での虚弱高齢者対象の研究では、大腿四頭筋と認知機能との関連、大腿部全体画像で脂肪断面積にも着目し、筋肉と脂肪の比や皮下・筋間脂肪の意義を、サルコペニア分類との関連から検討した。結果は、女性患者335名で、CSAは、正常と認知症の間で、4つの筋全てに有意差、MCI(軽度認知症)と認知症の間では中間広筋で、正常とMCI間では、内側広筋で有意に近い差を認めた。CT値は、正常と認知症の間で、直筋で有意と中間広筋で有意に近い差を認めた。また、321人での脂肪を含めた大腿全体の検討で、男女ともにサルコペニアで筋肉面積の有意な減少を認め、女性ではサルコペニアで皮下脂肪の低下を、機能低下群にて筋間脂肪の増加を認めた。CT値は男性はサルコペニア、重度サルコペニアで低下、女性は機能低下、重度サルコペニアで低下した。また、(B)一般住民520名対象の疫学研究では、筋量の補正方法として、身長やBMIで除す等、何れがより適切であるか、CSAとCT値を組み合わせることの影響などを検討した。その結果、男女ともにCSAを代表とする四頭筋CT計測値は運動機能と良好な関連を認め、CSAとCTVを同時評価することや、BMIでの補正は多くの運動機能との相関性を高めることが判明し、またSMI(骨格筋指数)を基準としたサルコペニア診断においては、男性ではCSAやCSA*CTVや身長での補正は高精度で有用であるが、女性では中等度の精度であることが判明した。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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