研究課題/領域番号 |
19K09639
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松井 雄一郎 北海道大学, 大学病院, 助教 (20374374)
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研究分担者 |
村上 正晃 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (00250514)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Dupuytren拘縮 / 一塩基多型 |
研究実績の概要 |
Dupuytren(デュピュイトラン)拘縮は手掌腱膜の線維性増殖に伴う肥厚、短縮により手指の不可逆性の屈曲拘縮を生じる疾患であるが、その詳細な病態は不明である。近年ゲノムワイド関連解析(以下GWAS)により、Dupuytren拘縮において複数の疾患関連一塩基多型(以下SNPs)やその関連遺伝子が報告され、さらに、本疾患の病態において慢性炎症の関与が示唆されている。 我々は、IL-6とNF-κBの同時活性化により、NF-κBが過剰に活性化し、サイトカイン・ケモカイン・増殖因子が相乗的に産生される炎症の増幅機構であるIL-6アンプを発見しており(Immunity 2008)、IL-6アンプの正の制御遺伝子として1000以上の遺伝子が明らかとなっている(Cell Reports 2013)。さらに既報のGWASにおける疾患関連SNPs(rs17171229、rs16879765)が関与する遺伝子の一つであるSecreted Frizzled Related Protein 4(SFRP4)はIL-6アンプの正の制御遺伝子である可能性があった。このことから、Dupuytren拘縮においてSFRP4によりIL-6アンプが増強され、疾患の発症・進行に関わるという仮設を立て、SFRP4によるIL-6アンプへの作用機序を解明することを目的に研究を行っている。 これまで、Dupuytren拘縮患者の組織中のIL-6アンプの活性化を確認した。さらに当院症例における上述の2種類のSNPsのリスクアレル頻度は、Dupuytren拘縮患者において上昇していた。また、リスクアレル保有症例において細胞中のSFRP4発現が上昇しており、SFRP4をノックダウンした細胞においてIL-6アンプが減弱することを確認している。現在、SFRP4がどのようにIL-6アンプに関与するか、詳細な機序について解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記により、Dupuytren拘縮検体においてIL-6アンプ活性化が存在していること、SFRP4はIL-6アンプ活性化において重要な役割を果たすこと、さらにSFRP4近傍SNPsのリスクアレル頻度がDupuytren拘縮患者において上昇することが明らかとなった。現在、SFRP4を恒常的にノックダウンした細胞および過剰発現する細胞を作成し、SFRP4がIL-6アンプにけるNF-κB経路とSTAT3経路のいずれに強く作用するかを解析している。
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今後の研究の推進方策 |
SFRP4がIL-6アンプにけるNF-κB経路とSTAT3経路のいずれに強く作用するかが明らかになれば、更にその経路に対してSFRPがどのように作用しているか精査する。また、生体内でのSFRP4の作用を評価するため、サイトカイン誘導性関節炎モデルなどの炎症誘導モデルにおいてSFRP4の発現抑制を行い炎症抑制作用を解析する予定である。また、免疫組織染色等により、SNPsの有無によるSFRP発現量や局在の変化を評価する予定である。
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