Dupuytren(デュピュイトラン)拘縮は手掌腱膜の線維性増殖に伴う肥厚、短縮により手指の不可逆性の屈曲拘縮を生じる疾患であるが、その詳細な病態は不明だった。近年ゲノムワイド関連解析(以下GWAS)により、Dupuytren拘縮において複数の疾患関連一塩基多型(以下SNPs)やその関連遺伝子が報告され、さらに、本疾患の病態において慢性炎症の関与が示唆されている。 我々は、IL-6とNF-κBの同時活性化により、炎症の増幅機構であるIL-6アンプを発見しており、IL-6アンプの正の制御遺伝子として1000以上の遺伝子が明らかとなっている。さらに既報のGWASにおける疾患関連SNPsが関与する遺伝子の一つであるSFRP4はIL-6アンプの正の制御遺伝子の一つであることも明らかとなっている。このことから、Dupuytren拘縮においてSFRP4によりIL-6アンプが増強され、疾患の発症・進行に関わるという仮設を立て、SFRP4によるIL-6アンプへの作用機序を解明することを目的に研究を行ってきた。 疾患群の組織においてNF-κBとSTAT3の同時活性化を認めた。さらに線維芽細胞においてNF-κBとSTAT3を共刺激するとIL-6の過剰発現を認め、IL-6アンプの存在が示された。SFRP4遺伝子近傍の2種類の疾患関連SNPsのリスクアレル頻度は、いずれも疾患群において上昇していた。疾患群の線維芽細胞ではSFRP4の発現が上昇しており、H4細胞(Human Brain neuroglioma cell)にてSFRP4発現を抑制すると、IL-6アンプの減弱がみられた。本研究結果により、疾患群の組織においてIL-6アンプ活性化が存在し、SFRP4はIL-6アンプ活性化に寄与すること、さらにSFRP4近傍SNPsのリスクアレル頻度が患者において上昇することが明らかとなった。
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