研究課題/領域番号 |
19K09640
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
土江 博幸 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (80513019)
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研究分担者 |
永澤 博幸 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (50375284)
宮腰 尚久 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (90302273)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アクリジンオレンジ / ビスホスホネート / 転移性骨腫瘍 |
研究実績の概要 |
がんの骨転移はADLを大きく低下させ、進行を予防するために骨吸収抑制剤を一般に用いるが、完全に進行を抑えることは難しい。アクリジンオレンジは弱塩基性の蛍光色素であり、酸性物質に親和性をもつ特徴を有し、光エネルギーや放射線などを加えると、細胞をアポトーシスに導く作用を持つ試薬である。アクリジンオレンジはがんに特異的な親和性を有していることが判っており、血管内投与された骨肉腫モデルマウスの肺転移を抑制することが報告されている。アクリジンオレンジを血管内投与することで、転移病変を縮小させる効果が期待できるが、骨転移に対する効果はまだ検討されていない。さらに、骨吸収抑制剤との併用効果に関しては、全く調べられていない。 そこで、マウスの大腿骨に直接乳癌細胞を注射することで骨転移モデルを作成し、これらのマウスに対してアクリジンオレンジとビスホスホネートを投与する。具体的にはコントロール群、放射線単独群、アクリジンオレンジ投与+放射線群、ビスホスホネート投与+放射線群、アクリジンオレンジ投与+ビスホスホネート投与+放射線群の5群を用意し、それぞれ6週間飼育する。経時的なμC Tでの腫瘍サイズの評価と骨腫瘍周囲での組織染色・免疫染色での評価、μC Tでの骨形態計測を主な評価項目としている。本研究課題により、転移性骨腫瘍に対するアクリジンオレンジと骨吸収抑制剤の効果が明らかになれば、がんの骨転移患者におけるQOLをより高める事が期待できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C57BL6/Nマウスに対するE0771乳がん細胞骨転移モデルを安定して作成し、アクリジンオレンジ単独群、ビスホスホネート単独群、アクリジンオレンジとビスホスホネート併用群、放射線照射単独群、コントロール群の5群をそれぞれ10体ずつ作成し、6週間飼育した。μCTを用いて、腫瘍移植後3週、4週、6週時点での骨転移による大腿骨骨破壊の程度を定量的に評価した。また、サクリファイス後の遠隔転移の有無を肉眼及びμC Tで確認 し、腫瘍に関しては重量と容積を測定した。さらにμCTを用いて腫瘍移植を行った大腿骨の骨形態計測を行った。すべての結果に対して統計ソフトRを用いて、統計学的に処理を行った。 腫瘍細胞注射後4週時点のμCTで、放射線群に比較した併用群で有意に骨破壊が抑制された(p<0.05)。注射後6週では、コントロール群及び放射線照射群に比較した併用群、また、放射線照射群と比較したビスホスホネート群において有意に骨破壊が抑制された(p<0.05)。すべての群において明確な肺転移は認めなかった。腫瘍重量と容積では、コントロール群ならびに放射線照射群に比較して、アクリジンオレンジ群及び併用群で有意に抑制されていた(p<0.05)。骨形態計測では、ビスホスホネート群および併用群が他群と比較して、皮質骨と海綿骨のBone Volume、Bone Surfaceそれぞれにおいて有意に増加している結果が得られた(p<0.05)。
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今後の研究の推進方策 |
今後は検体の組織学的を進める予定であり、ビスホスホネートを評価するためのTRACP染色と、腫瘍アポトーシス評価のためのTUNEL染色を施行したものを定量的に評価予定である。以上を踏まえて得られた結果から、論文作成を行い、世界への発信を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の評価項目において、費用がかかる一部の内容を昨年度中に行えなかったため、予定よりも使用額が少なくなったことが一つの要因と考えられます。今年度中に引き続き実験による評価を行う予定であるため費用は必要になると考えられます。また、昨年度はコロナの影響で国内外での学会活動がほとんど行えなかったため、旅費がほとんど使わなかったことも一つの要因と考えられます。
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