研究課題/領域番号 |
19K09642
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 健之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00583121)
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研究分担者 |
田中 栄 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (50282661)
杉田 直彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70372406)
茂呂 徹 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (20302698)
岡 敬之 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (60401064)
高取 吉雄 東京大学, 医学部附属病院, 客員研究員 (40179461)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 関節 / 手術 |
研究実績の概要 |
寛骨臼骨切り術は、1968年に世界で初めて、本学で行われた手術である。この手術は、変形性股関節症に対して行われる関節再建手術であり、骨盤の寛骨臼を球状に骨切りし、骨片を前外側に回転移動させ、大腿骨頭の被覆の増大と関節適合性の改善をはかるものである。現在では、進入方法などの違いによって多くの術式が存在するものの、同じ目的を持った寛骨臼骨切り術が日本全国で行われるようになっている。一方、手術件数の増加とともに成績不良例も増加している。これは、骨頭の内方化、大腿骨頭の骨性被覆、関節適合性、骨片の回転方向や回転角度など、本来三次元で評価すべき指標について、未だに二次元のX線画像のみで評価しており、術者の経験・技術への依存度が高い状態で手術が行われていることに起因すると考えられる。 本研究の目的は、従来二次元のX線画像指標と術者の経験・技術によって行ってきた寛骨臼骨切り術の正確性・安全性を高め、かつ臨床成績を向上させるために、コンピューター工学と臨床医学の融合により、「臨床のエビデンスに基づいた新たな三次元診断・手術指標」を確立することである。約50年にわたる寛骨臼骨切り術の臨床経験をもとに独自開発をした「骨盤・股関節形態の三次元解析・寛骨臼骨切り術シミュレーションソフトウェア」を用い、「股関節症患者の診療情報」を解析するところに本研究の独創性がある。本研究の成果により、寛骨臼骨切り術の臨床成績を格段に向上させ、健康寿命を延伸することが期待できる。 今年度は、以下の検討を行った。 1.CT画像データベースの構築および解析:申請者らが開発した解析ソフトウェアCoLaboHip Trialを用い寛骨臼骨切り術前後のCT画像の解析を開始した。 2.寛骨臼骨切り術のデータベースとの相関の解析:約50年にわたり行ってきた寛骨臼骨切り術の症例のデータベースの構築を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.CT画像データベースの構築および解析(達成度100%) 今年度はまず、寛骨臼骨切り術前後のCT画像の解析を、申請者らが開発した解析ソフトウェアCoLaboHip Trialを用い開始した。骨盤側の基準座標の設定には両側上前腸骨棘、恥骨結合を用いた。大腿骨頭の任意の4点をプロットして骨頭中心を求め、骨頭中心から骨頭径にオフセットを加えた同心円を作成し、骨頭を被覆する寛骨臼の部分を算出、被覆範囲を前外側・前内側・後外側・後内側に4分割した。骨頭の内方化(移動距離)、大腿骨頭の骨性被覆割合、関節適合性、骨片の回転方向・角度などを計測し、手術前後で比較検討した。 2.寛骨臼骨切り術のデータベースとの相関の解析(達成度100%) 当院でこれまでに施行した寛骨臼回転骨切り術の症例について、性別、手術時年齢などの基本データ、手術前後の日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOAスコア)、関節可動域などの臨床所見、手術前後の病期、CE角、AC角などの画像所見などからなるデータベースの構築を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
1.CT画像データベースの構築および解析: 2019年度の寛骨臼骨切り術前後のCT画像の解析を継続する。また、人工股関節置換術(THR)の手術前に行ったCT画像について、手術側のCTデータを臼蓋形成不全股のデータとして、対側が正常股の場合は正常股関節のデータとして解析する。申請者らが開発した解析ソフトウェアCoLaboHip Trialを用い、骨頭の内方化(移動距離)、大腿骨頭の骨性被覆割合、関節適合性、骨片の回転方向・角度などを評価する。なお、寛骨臼骨切り術後の対象者については2.の臨床データベースに取り込み、解析結果と臨床所見の相関を経時的に評価する。 2.寛骨臼骨切り術のデータベースとの相関の解析: 2019年度に引き続き、約50年にわたり行ってきた寛骨臼骨切り術の症例のデータベースを構築する。このデータベースとソフトウェアの解析結果を相関させることで、臨床のエビデンスに基づいた新たな三次元診断・手術指標を確立する。また、手術後10年を超える患者について同意が得られた場合にはCTを撮影し、1に記載した画像解析を行い、各パラメーターと臨床症状の相関を検討し、臨床のエビデンスに基づく診断基準・手術指標を確立する。
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