研究実績の概要 |
急性脊髄損傷後の二次損傷や脊髄損傷後疼痛において、活性化ミクログリアが関与していることは理解されているが、活性化ミクログリアの動態については十分解明されているとはいえない。本研究では、動物モデルおよび脊髄損傷・頚髄症患者を対象として、PK11195(ミログリアの活性化に伴いミトコンドリア膜上に発現するベンゾジアゼンピン受容体(PBR)のantagonist)を核種としたPET imagingを行い、活性化ミクログリア動態可視化の可能性を検証した。 急性脊髄損傷モデルにおける免疫組織学的検討では、PBRはCD11b, Iba-1とは一部mergeしたが、GFP陽性細胞との二重陽性細胞はほとんどみられなかった。これらの結果から、PBRは主に脊髄内ミクログリア由来の活性型ミクログリアに発現することが示唆された。autoradiographyでの[3H]-PK11195発現は、脊髄損傷後4日から14日で発現上昇がみられ、28日目での発現は低かった。[3H]-PK11195 PETでは損傷部を中心にuptakeがみられ、免疫染色と同等の経時的変化がみられた。[11C]-PK11195 PET/MRIを用いた臨床応用では、脊髄損傷後3ヵ月以内での症例でuptakeがみられた。しかし、急性期であっても損傷程度が強くはないと思われた症例や、疼痛の程度が強い症例であっても慢性期にはuptakeは確認されなかった。 核種にPK11195を用いたPET/MRIにて活性化ミクログリアの動態を可視化できる可能性が示唆された。しかしながら、急性期から亜急性期では活性型ミクログリアの発現がみられるが、慢性期では少なくともPK11195を核種としたPET/MRI撮影ではuptakeがみられず、難治性疼痛にはミクログリアの活性化以外の病態が関与している可能性や、他の核種での検討の必要性が示唆された。
|