研究課題/領域番号 |
19K09650
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
國定 俊之 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (80346428)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 軟部肉腫 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
粘液線維肉腫(MFS)患者、非MFS肉腫患者、健常人の血清RNAを用いてmicroarray解析を行った。細胞株はNMFH-1、NMFH-2、およびヒト間葉系幹細胞(hMSC)を用いた。患者血清、細胞株培養上清由来RNA、NMFH-1の担癌マウス血清由来RNAを用いてqRT-PCR解析を行い、MFSにおける分泌型miRNAを検討した。microarray解析により5種類、qRT-PCRにより5種類のうち3種類のmiRNAが健常人よりMFS患者の血清において有意に高く発現していた。さらに術後にも低下するmiRNAを選別した。このmiRNAはMFS細胞株培養上清、担癌マウス血清においてcontrolと比較し有意に発現が高く、腫瘍サイズと有意な相関関係を認めた。次に、MFS細胞株培養上清より抽出したexosome分画の解析を行い、これらを用いmigration assay、ヒト由来正常線維芽細胞(NF)を用いたinvasion assayによる機能解析を行った。MFS細胞株培養上清由来exosome分画においてもその発現は高かった。migration assayではexosome投与による肉腫細胞自身の移動能増加は認めなかったが、invasion assayではNFに腫瘍由来exosomeを暴露した群でコントロール群より肉腫細胞の浸潤性が増強された。MFSの患者血清・培養上清から分泌型miRNAを特定し、新規バイオマーカーとなりうる可能性が示された。さらにこのmiRNAは肉腫由来exosomeに内包されることが示され、肉腫細胞自身に作用するのではなく、周囲正常細胞に作用することで易浸潤環境を作っていると考えられた。すなわち腫瘍由来exosomeによるパラクライン効果の存在が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粘液線維肉腫(MFS)の患者血清・培養上清から分泌型miRNAを特定し、新規バイオマーカーとなりうる可能性が示された。さらにこのmiRNAは肉腫由来exosomeに内包されることが示され、肉腫細胞自身に作用するのではなく、周囲正常細胞に作用することで易浸潤環境を作っていると考えられた。2年前より悪性軟部腫瘍の細胞株に対する研究、患者血清での研究を継続できていて、 意義のある結果が得られている。今年度の研究成果は、おおむね順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度からの研究で、希少がんである悪性軟部腫瘍の滑膜肉腫と粘液線維肉腫で新規バイオマーカーとなりうる物質を探索してきた。滑膜肉腫では、特異的なmonocarboxylate transporter (MCT)を同定した。今年度は粘液線維肉腫で特異的な分泌型miRNAと肉腫由来exosomeを同定した。今後は他の組織型で同様の研究アプローチを行い、悪性軟部腫瘍に特異的なバイオマーカーに関する研究を継続していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19 pandemicにより、学会や研究会が中止や延期となり、予定していた旅費が執行できなかった。まだまだ不確実な現状であるが、今年度に開催予定の学会や研究会に参加予定である。研究解析に必要な実験材料や解析機材を購入することを検討している。
|