研究課題/領域番号 |
19K09650
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
國定 俊之 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (80346428)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | バイオマーカー / 肉腫 / リキッドバイオプシー |
研究実績の概要 |
軟部肉腫では、腫瘍のモニタリングに使用可能な、非侵襲的なバイオマーカーがないことが大きな問題となっている。そのため、滑膜肉腫患者の循環細胞外小胞(Extracellular Vesicles)を検出する技術を開発し、滑膜肉腫の腫瘍モニタリングのための高感度な分析技術を明らかにした。滑膜肉腫細胞株であるSYO-1、HS-SY-II、YaFuSSから精製した循環細胞外小胞をプロテオミクス解析して、199種類の共通タンパク質を同定した。AVID GO解析により、滑膜肉腫由来の循環細胞外小胞の表面マーカーとして、monocarboxylate transporter 1(MCT1)を同定した。MCT1は、健常者コントロールに比べて、滑膜肉腫患者から採取した血液から検出した循環細胞外小胞内で、高発現していた。また、MCT1+CD9+ EVsは、滑膜肉腫を移植したマウス血液からも検出され、その発現レベルは腫瘍体積と有意に相関していた(p=0.003)。さらに、MCT1+CD9+ EVsの血清レベルは、臨床的に滑膜肉腫患者の腫瘍量を反映していた。免疫組織化学的には、滑膜肉腫の96.7%の検体でMCT1が陽性であった。MCT1の細胞質/細胞膜への発現量と全生存率の低下には、有意な関連性を認めた(p=0.002)。MCT1の発現を抑制すると、滑膜肉腫細胞の細胞生存率、移動・侵入能力が低下した。MCT1+CD9+ EVsの発現を解析することで、滑膜肉腫の病勢を高感度にモニターすることが可能となり、リキッドバイオプシーの標的として有望である。さらに、MCT1は、滑膜肉腫の新しい治療標的となる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID19 pandemicにより、我々医師の働く環境が大きく変化した。通常の臨床活動にも様々な制限があるだけでなく、COVID19関連の業務にもadditionalに従事せざるをえない。研究を行う時間を確保することが、かなり難しかった。さらに、研究活動そのものも、想像以上に制限されている。研究は継続しているが、当初の計画通りに進めることができなかった。研究スピードは緩徐となったが、ゆっくりではあるが、臨床的に有意義なバイオマーカーの解析を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
COVID19 pandemicによる制限も徐々に緩和されてきており、2022年度は、研究活動を元の状態に戻し、さらに活性化していきたい。今までの3年間で新しい肉腫のバイオマーカーを、いくつか同定できている。COVID19のため、1年間の研究期間延長となった。次年度は最終年度であり、リキッドバイオプシーに有用なバイオマーカーを同定して適切に検討し、研究成果を発表する予定である。臨床に還元可能で、肉腫患者さんに有意義な結果を報告したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19 pandemicによるadditional な臨床業務の増加、および研究環境の制限により、予定していた研究の遂行が難しかった。 使用計画については、次年度実施予定の肉腫バイオマーカーの分析に必要な費用等に充当する予定である。
|