当科で初回手術治療を行った粘液線維肉腫(MFS)症例、未分化多形肉腫(UPS)症例における治療前血清中CSF-1濃度を計測し、臨床病理学的および腫瘍学的意義を検討した。ヒトMFS・UPS細胞株、マウス線維肉腫細胞株から培養上清へのCSF-1分泌を解析し、腫瘍随伴マクロファージ(TAM)誘導の可否および動物モデルにおける腫瘍増大との関連性を解析した。 治療前血中CSF-1濃度(pg/ml)はMFS 401.5、UPS 451.5であり、健常人の167.9に比べ有意に高値を示した。各細胞株から培養上清へのCSF-1分泌は細胞数・培養時間依存的に上昇した。マウス骨髄細胞をこれらの培養上清で培養すると、CD45+CD11b+CD206+細胞がenrichされTAMに分化誘導された。NFSa Y83を接種したマウス血中CSF-1濃度は、接種前と比較し腫瘍増大に伴い有意に上昇し、腫瘍サイズと正の相関を示した。患者由来血中CSF-1高値はCD63+細胞(p=0.020)、CD163+細胞(p=0.045)の浸潤割合が高く、CSF-1高値(p=0.040/0.027)、単球割合高値(p=0.008/0.028)、単球リンパ球比高値(p=0.043/0.043)が無病生存率/無転移生存率における予後不良因子であった。 浸潤性軟部肉腫からCSF-1が豊富に産生され、その血中濃度はTAM浸潤を予測し、予後不良因子であることが明らかになった。TAMは主に単球に由来するため、血中単球割合が予後関連因子であったことはCSF-1高値による単球-TAM誘導のメカニズムと臨床病理像の密接な関連性を裏付ける結果と考える。血中CSF-1測定はTAM標的治療の適応判断基準となり得る。
|