研究課題
膝軟骨損傷に対する治療は、古くから骨穿孔法が行われているが、簡便にできる反面、組織修復動員細胞数が十分でないため、軟骨修復が不十分になるという欠点がある。近年は、再生医療である自家培養軟骨移植が一部認められているが、この方法は軟骨採取、患部への移植と複数回の手術が必要で、理想的な方法とは言えない。そこで本研究の目的は、単回の手術で簡便に安価な、自己完結型フィブリンシートをパッチとして使用した新しい骨穿孔術の治療効果を証明することである。自己血由来フィブリンシートの作製:日本白色家兎の末梢血をガラス製の採血管を用いて採取し、抗凝固剤を添加せずに特殊な遠心機(メディフュージ)を用いて遠心分離を施行した。得られたフィブリンゲルをシャーレ上で引き延ばし、シート状にした。この方法により安定してフィブリンシートを作製できる技術を確立した。自己血由来フィブリンシートを用いた一期的軟骨再生技術の開発:日本白色家兎の膝関節大腿骨滑車部に径5mmの骨軟骨欠損を作製、23G針で5箇所骨穿孔を施行し、その表面にフィブリンシートを6-0ナイロン糸で固定した。左膝をフィブリンシート群とし、右膝には骨軟骨欠損を作製後、骨穿孔のみを施行しコントロール群とした。移植後4,12,24週で犠牲死させ、修復した膝軟骨について肉眼的、組織学的検討を行った。肉眼的評価はICRSの評価を用いて評価し、組織学的評価はトルイジンブルー染色を行い、modified Wakitani histological scoring systemにより点数化することで評価した。各時期で6羽ずつ評価した。4週では肉眼的評価および組織学的評価で両群間に有意な差は認めなかったが、12,24週では肉眼的評価および組織学的評価でフィブリンシート群において有意に軟骨修復が良好であった。
2: おおむね順調に進展している
今年度の予備実験によって、自己血由来フィブリンシートの作製の確立、自己血由来フィブリンシートを用いた一期的軟骨修復モデルはほぼ確立できたと考えられる。
自己血由来フィブリンシートの生体学的検討を行う。フィブリンシートのgrowth factors(PDGF, IGF-1, TGF-β)の計測をELIZAで施行する。日本白色家兎の骨髄血より間葉系幹細胞を単離・培養し、フィブリンシートと共培養し、軟骨化評価をAlcian blue染色で評価し、軟骨関連遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRで計測する。
当該年度においては、予備実験によって動物実験系確立を主に研究を行ったため、旅費は発生しなかった。また、培養実験系についてはまだ開始できていない状況であったため、次年度において、本年度に使用しなかった費用を培養実験系のための費用として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
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