これまでに大腿骨頭と寛骨臼の間に介在物を入れて連続負荷をかけて応力分布を検討した報告はない。本研究では、骨粗鬆症モデル模擬骨を用いて、日常生活で想定される負荷量を繰り返し負荷することによる大腿骨頭にかかる応力と模擬骨に生じる変化について検討した。また、模擬大腿骨頭と寛骨臼を想定した金属性の半球の間に内反関節唇を想定した介在物が存在するかどうかで応力分布や模擬骨頭に生じる変化が異なるか検討した。本研究により内反関節唇のようなものが関節内に介在することで大腿骨頭表面にかかる応力分布が大きく変化することが明らかとなった。急速破壊型股関節症の発生メカニズムの一つと考えられている大腿骨頭軟骨下骨折が起こる機序は未だ不明であるが、大腿骨頭軟骨下骨折の一因として骨脆弱性が考えられている。本研究結果から、骨脆弱性のみでは、日常生活動作で想定される繰り返し負荷により大腿骨頭軟骨下骨折は生じないことがわかった。一方、本研究結果から10×5mmのゴム片を模擬大腿骨頭前上方部分に介在させることでおよそ5.6倍の応力集中が起きることがわかり、骨折型も何も挟まない場合と異なり、骨頭表面に骨折を生じることが明らかとなった。このことは、骨脆弱性に加えて内反関節唇が介在することにより日常生活で通常歩行と同等の繰り返し負荷がかかることのみでも大腿骨頭軟骨下骨折が惹起されうることがわかった。この結果は実臨床でみられる事象を実験的に裏付ける重要な結果であると考えられる。
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