研究課題/領域番号 |
19K09659
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
石田 昌義 近畿大学, 医学部, 助教 (50643251)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 骨芽細胞 / 性差 |
研究実績の概要 |
PAI-1は線溶系に重要なPAを阻害する因子で、骨粗鬆症・糖尿病・心血管疾患・癌など、止血作用以外に種々の疾患の病態に関与することが知られてきた。我々は以前に、PAI-1が雌マウスでのみ糖尿病性骨粗鬆症の病態に関与し、雄由来ではなく雌由来の骨芽細胞でのみ、骨芽細胞の分化や機能を抑制することを示した(Diabetes 2013)。しかし、PAI-1が雌骨芽細胞でのみ抑制作用を示す機序は不明であった。そこで、今回PAI-1刺激により発現が雌でのみ増加する因子の同定を、網羅的遺伝子発現解析(cDNAマイクロアレイ)を用いて試みた。 雄雌マウス由来骨芽細胞にPAI-1を添加し、雌でのみPAI-1により発現が2.5倍以上増加した遺伝子を抽出したところ、RanBP3LやCcl3を含む41個の遺伝子が抽出された。 遺伝子発現解析により、Ccl3はPAI-1で刺激した雌由来骨芽細胞株には有意な発現上昇は見られなかったことからCcl3はPAI-1により誘導される因子ではないものとして除外した。一方、PAI-1刺激によって雌由来骨芽細胞で有意な発現上昇を見られたため、PAI-1刺激によって発現が誘導され、骨芽細胞の機能抑制を生じさせる因子の一つである可能性が高まったため、解析を進めることにした。RanBP3L過剰発現は、マウス骨芽細胞様MC3T3-E1細胞の分化やALP活性を抑制した。さらには、RanBP3L過剰発現は、BMP2刺激によりSmad1/5/8のリン酸化を抑制していた。 以上より、PAI-1によって雌由来骨芽細胞の機能を抑制される原因因子の一つとしてRanBP3Lが考えられ、PAI-1を介した糖尿病性骨粗鬆症の病態に関与していることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的遺伝子発現解析により同定した因子について解析を進めており、現在は再現性を再確認している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、雌由来骨芽細胞においてPAI-1添加により誘導されるRanBP3Lが骨芽細胞の機能抑制に関わることを証明してきた。siRNA導入によりPAI-1刺激により骨芽細胞の機能抑制が回復することに再現性が確認されれば、論文化を行う。RanBP3Lのプロモータ領域にはエストロゲン受容体結合サイトの存在が予測されたため、性ホルモンによって誘導されている可能性も考慮しながら解析を行う。 また、RanBP3Lの過剰発現ではBMPシグナルによりSmadのリン酸化を抑制していたので、今後は骨形成系においてはRanBP3Lが骨芽細胞の機能を抑制させる機序と骨吸収系におけるシグナル系、作用機序についても検討していく予定である。 PAI-1以外にもいくつかのSerine protease inhibitorが骨代謝に関与しうるためそれらに関しても骨粗鬆症に関与するか否かを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、使用予定の試薬が製造過程で不良品となり納期未定となったため代替品を使用したため、差額が生じた。翌年度は、計画的に使用する予定である。
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