研究課題/領域番号 |
19K09661
|
研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
比留間 徹 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 部長 (20254188)
|
研究分担者 |
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 所長 (00254194)
大津 敬 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 副技幹・主任研究員 (10270696)
笠島 理加 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 副技幹・主任研究員 (20630875)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 患者由来ゼノグラフト / 脱分化型脂肪肉腫 |
研究実績の概要 |
成人の切除不能あるいは再発・転移陽性の肉腫は根治困難で、多くは、延命と症状緩和を目的とする薬物療法として、ドキソルビシンを中心とする汎用プロトコルが選択され、治療の個別化は進んでいない。近年、サイクリン依存性キナーゼの一つである CDK4の遺伝子増幅、タンパク質の高発現が、脱分化型脂肪肉腫(DDLS)の分子マーカーの一つとして病理診断に利用されている。 本研究では、2系統の樹立済みCDK4陽性DDLSの患者由来ゼノグラフト (PDX)を利用して、ホルモン受容体陽性乳癌の治療薬として上市されたCDK4/6阻害剤を軸に、PDXの特性を利用して初めて可能となる遺伝子発現解析手法(インタラクトーム解析)を用いた網羅的で詳細な肉腫細胞と間質細胞の相互作用解析から、進行再発DDLSの根治を目指した新規治療法開発の基礎的概念を確立する。 令和元年度は、ヒトとマウスのmRNA塩基配列の違いから、がん細胞(ヒト)と間質細胞等(マウス)の遺伝子発現を区別し、インタラクトーム解析を行うため、まず、2系統のPDXモデルを作製した。継代3代目のPDXが1000立方ミリ大程度に成長した時点で採取、継代用組織片およびRNA抽出用組織片の採取、FFPE組織とPFPE組織の作製を行った。FFPE標本において、ヒトとマウスの細胞を識別するため、6種類の抗原についてヒト特異的およびマウス特異的抗体で免疫染色を行い、腫瘍細胞がヒト由来であること、血管等の組織がマウス由来であることを確認した。当該PDX組織よりRNAを抽出し、2症例各3検体のRNA塩基配列情報を取得した。 令和2年度になり、上記2症例のうち1症例について、再度の病理診断で未分化多形肉腫(UPS)の可能性が高いとされたため、新たに提供を受けた6症例のDDLS手術検体よりPDXを作製し、このうち1症例で3代目までの継代が終り、治療実験の準備が整った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主眼である、治療開発実験に向けた基礎データを取得できたが、解析を行った2症例のうち1症例について、再度の病理診断で未分化多形肉腫(UPS)の可能性が高いとされた。そのため、治療実験のための新たなPDXモデル作製に時間を取られていて、研究の進展はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は早急にPDXモデルを作製し、CDK阻害剤の投与実験を開始すると共に、未治療群のインタラクトーム解析を行い、その結果を基にCDK阻害剤投与群のインタラクトーム解析を行う。これらの解析は、CDK阻害剤に上乗せ効果が期待できる相互作用があるか、CDK阻害剤の二次体制出現に関わる可能性のある相互作用があるか、の視点から進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
治療実験に必要な試薬を購入しようとしたが、残金を上回る価格のため、次年度使用額として、令和3年度に購入することとした。
|