研究課題/領域番号 |
19K09665
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 千鶴 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (80347054)
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研究分担者 |
武藤 透 千葉大学, 大学院医学研究院, 技術専門職員 (30422265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 男性不妊症 / 遺伝子改変不妊症モデルマウス / Odf4遺伝子欠損マウス / Odf4-EGFP トランス ジェニックマウス / Odf4レスキューマウス |
研究実績の概要 |
本研究初年度(令和元年)には、CRISPR/Cas9システムを用いて作製した男性不妊を呈するOdf4遺伝子欠損(Odf4-KO)雄マウスの精巣と成熟精子を解析し、新たにOdf4-EGFPトランスジェニック(Tg)マウスを作製した。令和2年度もOdf4に関する研究を中心に行い、Odf4-KO雄の不妊の原因をさらに詳細に解析した。Odf4-KO精子で消失する分子が、精巣内では発現していることから、それらの分子はいったん精巣内で作られた後に精子形成過程で消失することが判明した。その他の精子尾部に局在する代表的なタンパク質は野生型精子と差異なく存在していた。Odf4-EGFP Tgマウスの精子および精巣を用いてOdf4の局在を蛍光顕微鏡、免疫電顕等にて解析した。先体が緑色蛍光を発するように作製したEqtn-EGFP TgマウスとOdf4-KOマウスを交配させて(Eqtn-EGFP)Odf4-KOマウスを作製し、女性生殖管内のOdf4-KO精子の動態をin vivoで解析した。また、Odf4-EGFP TgマウスとOdf4-KOマウスを交配させて(Odf4-EGFP)Odf4-KO Tgマウス(Odf4レスキューマウス)を作成した。Odf4レスキューマウスは正常形態の精子を持ち、野性型雄と同様の妊孕性があることを明らかにした。Odf4-KO精子で消失した分子がOdf4レスキュー精子では野性型精子と同程度に回復していることを免疫染色法およびwestern blot法にて確認した。さらにOdf4-EGFP Tg精子を用いた免疫沈降法により、Odf4とそれらの分子が複合体を形成していることを確認した。 Odf4は具体的な機能は発見以来不明であったが、本研究により受精に重要な役割をもつことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究の推進方策どおりに、初年度に作製したOdf4-EGFP Tgマウスを用いて、Odf4の局在及び関連分子の局在を解析した。免疫沈降を行いOdf4と共在する分子を同定した。また、Odf4レスキューマウスを作製し、解析によりそれが正常機能を示すことを明らかにし、男性不妊を起こす一連の障害がOdf4遺伝子欠損により生じることを証明した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度もOdf4に関する研究を中心に行い、Odf4欠損によって生じる精子障害が原因で起こる不妊の治療法や、正常精子の受精能を傷害する避妊法の開発につながる基礎データーを集めることを目標とする。①Odf4遺伝子欠損精子の尾部屈曲異常が起こるメカニズムを解析する。尾部の屈曲奇形と培地の浸透圧との関係、cytoplasmic dropletとの関係を解析する。②Odf4と精子運動およびエネルギー産生との関係を解析する。Capacitation前後の精子尾部の運動(中間部と主部のbeat回数)をOdf4遺伝子欠損精子と野生型精子で比較解析する。Odf4遺伝子欠損精子と野生型精子のATP濃度とADP濃度を比較解析する。③Odf4関連分子の阻害剤を用いて受精実験を行う。
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