研究実績の概要 |
本研究初年度に作成したOdf4遺伝子欠損マウスを用いて研究を進めた。前年に引き続き精子尾部に局在する代表的なタンパク質(ODF1,2, TEKTIN4, CATSPER3, SEPTIN 4,7, SLC22A14, GAPDHS等)をOdf4遺伝子欠損精子と野性型精子を用いて比較解析したが、顕著な差異は認められず、不妊の原因はODF4の欠如が主原因であることが判った。次にOdf4遺伝子欠損精子の屈曲と培地の浸透圧が無関係であることを確証するために、3個体以上の精子を150 (血漿の半分の浸透圧) 、310 (血漿の浸透圧に近似) 、380 (子宮内の浸透圧) 、440 mOsm/kgH2O のTYH培地に入れてそれぞれ200匹以上を野性型精子の形態と比較解析した。その結果、Odf4遺伝子欠損精子はいずれの浸透圧においても90%以上の精子が屈曲することが判り、屈曲異常が培地の浸透圧と無関係であることが証明できた。また、Odf4遺伝子欠損精子を精巣上体頭,体,尾から3個体以上かつ200匹以上ずつ回収してその形態を野性型精子と比較解析した。その結果、野性型精子では頭,体,尾と精巣上体内を移動するにつれて伸長する精子が増加するのに対して、Odf4遺伝子欠損精子では屈曲する精子が増えることが判った。その際、余剰細胞質の残存が尾部屈曲異常に関与していることが明らかになった。精子尾部に局在するアクアポリン4と8をwestern blotにて野性型精子と比較したが差異がないことから、ODF4欠如が余剰細胞質の残存に関与していることが示唆された。本研究から得られた結果は論文にまとめて英文雑誌に投稿し現在査読中である。また、学内共同研究として電子顕微鏡解析と遺伝子改変動物作成を行い共著論文を発表した。
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