研究内容:男性不妊症の診断で過去にSTR-PCR法でY染色体微小欠失の検査をうけ、欠失パターンが判明している95例に末梢血より得られたゲノムDNAを用いてMLPA法でY染色体遺伝子のコピー数の変化を調べた。AZFa欠失は4/4で、AZFb欠失は1/1で、AZFc欠失は13/13、AZFb+c欠失は11/11(4例は染色体異常を含む)、b1/b4欠失は4/4(2例は染色体異常を含む)、欠失なしは11/11でSTS-PCR法との結果は100%一致していた。b1/b3欠失は4/5で、b2/b3欠失は12/26で、gr/gr欠失は14/17で結果は一致していた。b2/b3欠失は9例で正常と判定されており、gr/gr欠失は3例が重複合併例であった。 STS-PCR法との結果はおおむね一致しており、b2/b3欠失、gr/gr欠失において結果が一部異なっていたが、これはむしろSTS-PCR法の検出の限界と考えられた。 また、モザイクを含む染色体異常の場合、そのモザイクの割合によってコピー数が変動することがわかり、染色体核型検査の結果をより深く解釈することが可能であった。 意義・重要性:本研究により男性不妊症におけるY染色体遺伝子のコピー数異常の検出にMLPA法が有用であることが分かった。Y染色体微小欠失が男性不妊と密接に関係していることは周知の事実であるが、コピー数増加がどの程度影響を及ぼしているのか、また、欠失と重複が混在している、従来の分類では分類不能となるようなパターンがどのような臨床的特徴を持っているかは今後の臨床データの蓄積に期待したい。
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