研究実績の概要 |
少子化の点から、男性不妊に対する侵襲性の少ない新たな治療法が求められている。色素性乾皮症(XP)は、皮膚癌発生・精神神経症状・精巣発育不全を臨床症状とし、DNA修復に異常をもつ。我々は、A群色素性乾皮症遺伝子(Xpa遺伝子)を欠損したXpa遺伝子欠損マウス(Xpaマウス)の解析から、このマウスが加齢とともに造精障害となることを示した。最近、A群XP患者細胞において、NAD+の減少によって抗老化遺伝子サーチュイン1(Sirt1)の発現が低下し、オートファジーが亢進する病態がわかった。本研究は、内在性生理物質で老化制御因子のニコチンアミドモノヌクレオチド等のNAD+の中間代謝産物(NAD+中間体)を補って、Sirt1発現を正常レベルに維持することで、Xpaマウス精巣のオートファジー誘導及び精巣の変性が抑制されるか否かを調べる。一部の男性不妊患者の精巣でもXpa遺伝子の発現低下を示す報告があり、我々は男性不妊患者の精巣でXpaマウスと同様の病態であるとの仮説を持つに至った。本研究は、造精障害の新病態に基づく治療を検証し、治療法の開発を目的とする。本研究で、Xpaマウス精巣変性がオートファジーの誘導によることを論文として発表した(Nakane et al, 2020)。また、オートファジー・モニターマウス(Xpa-LC3)は、Xpaマウスより早期に精巣病変(空胞化)を生じるので、NAD+中間体の影響評価の可能性を見出した。さらに、同マウスを用いて、NAD+中間体によるXpa-LC3マウス精巣での形態学的検索および網羅的解析を実施・解析中である。現時点で例数は少ないが、NAD+中間体の投与群のXpaマウス精巣において、光顕で著しい形態変化は見られていないが、今後例数を増やして検討予定である。
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