研究課題/領域番号 |
19K09677
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
戸澤 啓一 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40264733)
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研究分担者 |
安藤 亮介 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30381867)
安井 孝周 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40326153)
岡田 淳志 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (70444966)
濱本 周造 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (80551267)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オートファジー / 低酸素応答 |
研究実績の概要 |
結石形成にはサイトカインやマクロファージの関与が報告され、これらは、NO、シュウ酸負荷などにより発現が誘導される。尿細管細胞内でのシグナル伝達では、酸化ストレスが起点となる。本研究では、尿路結石形成に重要な役割を果たしている酸化ストレス応答に係わるシグナル伝達系に着目して結石再発予防を目指す。 マウス腎尿細管細胞に対してシュウ酸カルシウム1水和物を添加し、オートファジー活性と選択性をtandem fluorescent-tagged LC3のtransfectionによるLC3の発現量と、オルガネラとユビキチン蛋白、リン酸化p62の二重免疫染色、さらにPINK1/ParkinのWestern blotで検討した。また、オートファジー可視化マウスに、シュウ酸前駆物質であるグリオキシル酸の連日腹腔内投与により、結石を形成させ、in vitroと同様な手法で結石形成量とオートファジーの関係を検討した。その結果、in vitro,vivoともオートファジーは、傷害されたオルガネラを選択的に除去することで結晶の付着、結石形成を抑制した。酸化ストレスや炎症の亢進による尿細管細胞障害が結石形成を促進し、オートファジー機構により修復が図られることから、新たな結石治療薬の可能性が示唆された。 さらに、腎尿細管細胞の炎症は腎結石形成を促進させ、各組織の炎症は、組織に低酸素環境を生じ、さらに炎症を増悪させる。低酸素応答の過程にはプロリン水酸化酵素(PHD)-低酸素誘導因子(HIF)経路による抗炎症作用が関与している。そこで、PHD阻害剤であるFG4592(FG)を用いた腎結石形成の抑制効果を検討した結果、PHD阻害剤が尿細管上皮細胞への炎症、酸化ストレスを抑制することで、細胞への結晶付着が抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、想定していたNrf2 酸化ストレス応答系より、オートファジーや低酸素応答による腎結石形成への関与、および結石形成抑制の可能性が高いことが分かってきた。薬物による腎結石形成抑制は急務であり、より効果の期待されるオートファジー、プロリン水酸化酵素(PHD)-低酸素誘導因子(HIF)経路に着目して研究を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
腎結石形成とNrf2 酸化ストレス応答系の関与の研究を進めながら、同時に、プロリン水酸化酵素(PHD)-低酸素誘導因子(HIF)経路に着目して研究を進めていく。特に、PHD阻害剤であるFG4592(FG)を用いた腎結石形成の抑制効果を検討して、尿路結石治療薬への道筋をつけたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
1) 抗酸化物質のNrf2シグナル伝達系への影響と結石形成抑制効果、2) 結石形成モデルマウスでのNrf2シグナル伝達系関連蛋白の発現を遂行する予定であった。計画自体は順調な滑り出しであったがCOVID-19による通常の医療業務が大幅に変更となり、予定していた研究を進めることができなかった。このため次年度使用が生じた。次年度には1)2)のよりよい結果を得るよう研究を進めたい。
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