研究課題
男性不妊症の治療は、女性の不妊症と比較し有効な治療法が確立されていないため、漢方製剤を用いた治療に期待されている。過去の臨床調査および動物実験により、八味地黄丸および補中益気湯が男性生殖器に与える影響が研究されてきた。男性不妊症の約70%は特発性精子形成障害であり、その大きな要因に精巣の微小循環障害が関与しているとされることから、特に微小循環障害改善の可能性のある漢方製剤に着目すべきであるとの考えに至り、漢方製剤の探索を行ってきた。8週齡・雄・ICRマウスを用いてCdCl2投与により精巣の微小循環障害モデルを作製し、漢方治療を単剤処方で実施した。漢方製剤は桂枝茯苓丸および当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用いて、ヒト投薬量を体重換算し5倍を餌に含有したものを作製し、15日および30日自由摂食させた後に屠殺し解析を行った。CdCl2を投与したマウスは精巣毛細血管障害を惹き起こし、リンパ球浸潤を伴う造精機能障害を認めたが、桂枝茯苓丸含有餌の食餌により精子形成障害が抑制され、精子の産生を保護することを観察した。また、当帰四逆加呉茱萸生姜湯含有餌の食餌により、CdCl2を投与した陽性対照群に比し漢方餌を投与した実験群の方が精細管壁の構造が保たれ、かつ間質の毛細血管が保たれている様子が観察でき、精子形成障害の程度が明らかに弱いことを確認することができた。今後は、これら漢方製剤が精巣機能をどの程度保護・改善するか、精子の性状および妊孕性をどの程度保護・改善するか、さらに、精巣機能、精子の性状および妊孕性の改善・保護に寄与する作用機序の解析を行っていく。
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