研究実績の概要 |
腎移植後のBKウイルス(BKV)の再活性化は、BKVに対する特効薬がないことと検査系の確立が不十分なため、過剰免疫抑制により腎症に進展しうる。一方で、感染症後の免疫抑制剤の減量は、細胞性の拒絶反応はもちろん、新規のドナー特異的抗体 (de novo Donor Specific Antibody (DSA)) 産生による抗体関連型拒絶反応が惹起し、移植腎の長期生着を阻んでしまう。BKV感染によりグラフトの抗原性を高める可能性もあり、そのメカニズム解明は急務である。本研究は、腎移植後に起こるBKV再活性化をモデルに、BKV腎症に進展させず、なおかつde novo DSAの産生を促さない適切な免疫抑制療法達成を最終目的とする基礎研究である。本研究は、腎移植後に起こるBKV再活性化を、BKV腎症に進展させず、なおかつde novo DSAの産生を促さない適切な免疫抑制療法及び治療法を確立し、グラフトの長期生着を目指す。そのために次の3つの点を明らかにする。(1)移植前の潜在的なBKV感染(ドナー・レシピエント)とBKV再活性化との関連性。(2)BKV特異的反応性を持つT細胞リンパ球測定法の確立。(3)BKV感染による、血管内皮細胞上のHLA class I,II発現への影響。今年度は特に(2)BKV特異的反応性を持つT細胞リンパ球測定法の確立 を行った。【結果】(1) Rの血中抗BKV-IgG抗体価がR(-)であるとBKV血症のリスクが有意に高まる。(2) 細胞性免疫の測定は、BKVの他に比較のため、CMV,VZVの特異的T細胞性免疫をIFN-γELISPOT法で行った。CMV,VZVに比較して、BKV特異的T細胞の検出頻度は低く、今後、BKV特異的ペプチドを用いて増殖培養系を確立し、フローサイトメトリー法を用いて、サイトカイン細胞内染色法を用いる必要があると思われた。
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